ことば・辞書・日本語文法(2)

日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

児童語

人に教えてもらった話なのですが、あまりにもわかりやすい話なので書いておきます。 三省堂国語辞典は、ことばの文体的な特徴を示すために、たとえば〔文〕〔話〕〔俗〕などの略語を使っています。この三つの例はそれぞれ、「文章語」「話しことば」「俗語」…

いいえ:否定疑問

新明解の「いいえ」の項にある「否定疑問」に対する答え方がおかしいように思うので。 まずはよいと思う例。明鏡国語辞典の解説を。 明鏡 相手や自分のことばを打ち消したり反対の気持ちを表したり する語。いえ。いや。「『連休は旅行ですか?』『-、旅行…

かわいい・かわいらしい

前回は「愛らしい・愛くるしい」について考えたのですが、「どちらも「かわいらしい」にことに違いはないとして」などと書いてしまいました。では、「かわいらしい」とはどういう意味でしょうか。また、「かわいい」とは。 かわいらしい 〔小さいものなどが…

愛くるしい・愛らしい

また三省堂国語辞典ですが、、、。 愛くるしい 〔子どもなどの顔やしぐさが〕見るからにかわいらしい「-笑い顔」[派生] 愛くるしげ。愛くるしさ。 愛らしい 愛情をいだかせるようすだ。かわいらしい。「-しぐさ」[派生] 愛らしさ。 どちらも「かわいらしい…

赤い

「赤い」について一言書くのを忘れていました。三省堂国語辞典から。 ①赤の色だ。「赤う(アコ)うございますね」 「赤の色だ」にも不満があるのですが、それはおいておくとして、唯一の用例が「赤うございますね」でいいものでしょうか。 もっとふつうの例で…

このところ、三省堂国語辞典ばかり見ています。「赤」の項を。 赤 ①色の一つ。血や火の色。〔信号の赤は停止を意味する〕 ②③(略)④←赤組。(⇔白) ⑤以下略 この④の「←」は「もとの形」をあらわすということですので(「この辞書のきまり」の中に説明がありま…

青・青い

三省堂国語辞典の「青」を見ながらごちゃごちゃと。 あお 青 ①色の一つ。秋晴れの空や深い海の色。 ふむ。秋晴れに限定する意味はあるのでしょうか。単に「晴天の空」ではだめなのかしら? 「深い海」は「深海」ではないのでしょう。ただし、海の色も晴天の…

青田

前回の「青菜」から「青」つながりで「青田」を見てみます。 青田〔名〕 稲の葉が青々と育った田。特に、まだ稲の実りきらない時期の田。 [明鏡国語辞典 第二版] 「青田」自体は上の説明で問題はないでしょう。よく話題になるのは「青田買い」です。 また、…

青菜

三省堂国語辞典の「青菜」という項目を見ると、 青菜(名) なっぱ。 語釈はこれだけです。(この後に、「青菜に塩」という句の説明があります。) では、「なっぱ」を見るともう少し説明があるかと思うと、 菜っ葉(名) 菜(の葉)。 で終わりです。(この後…

雑草

三省堂国語辞典で「あかざ」という項目をみると、 あかざ 〔植〕雑草の名。昔は食用。 とあります。ずいぶんそっけないなあ、と思います。それに、「雑草」なんて語を語釈に使っていいのかなあ、とも。 で、「あかざ」をほかの辞書で見ると、 畑・荒れ地に自…

アイデア

「アイデア」は説明が難しいことばです。 三省堂国語辞典を見てみると、 (いい)思い付き。着想。アイディア。「-マン〔=いいアイデアをつぎつぎに出す人〕」 「いい思いつき」ですか。どうもピンと来ません。「思い付き」「着想」を見てみましょう。 思い…

IH(調理器)

この「IH」というのはどういう原理なのか。例解新国語辞典によると、 アイエイチ 電磁誘導加熱。磁力線を利用して加熱調理する方式。うずまき状のコイルで磁力線を発生させて電流を起こし、その電流がなべそのものを発熱させて加熱調理を行なう。 んだそうで…

愛飲・愛犬など

三省堂国語辞典で、「愛-」のことばを見てみます。 「愛」の後ろに、動詞的な要素がつく場合。「~する」の形になります。 愛育 (人を)かわいがってそだてること。 愛飲 〔酒・コーヒーなどを〕日頃から好んで飲むこと。 愛玩 (小さい動物などを)かわいがっ…

愛する

三省堂国語辞典の「愛する」を見て、ん? と思いました。 愛する(他サ)①愛の気持ちをおこないにあらわす。かわいがる。「子どもを-」 ②好む。好きだ。「詩を-」 ③(気に入って)たいせつにする。 △愛す。(⇔にくむ) [可能]愛せる。 この①の語釈は何だかわ…

あいだ

ずいぶんサボっていましたが、久しぶりに。 「あいだ(間)」ということばをどう説明するか。わかりきったようなことばだからこそ、難しい。 まず面白いのは岩波国語辞典です。 ①これとそれとに挟まれたところ。 ア 並ぶ(並べて考える)これとそれとが挟む…

お昼

「お昼」という語について。 三省堂国語、新明解にはこの語はありません。「昼」はもちろんあり、「お」をつけた用例ものせていますが、「お昼」という形で項目とする必要は感じていないようです。 明鏡は「おひる」という項を立て、次のように書いています…

地名

国語辞典で地名をどう扱うかというのは、難しい問題で、かんたんに答えの出ることではないでしょう。 固有名詞は項目としない、というのは一つの態度ですが、それでうまくいくかどうか。 たとえば、「アメリカ」という地名・国名をどのように説明するか。 三…

右・左(2)

右と左の続きです。 他の三冊の辞書で、同じ項目を調べてみました。 現代例解 学研現代 例解新 右側みぎがわ × × × 右側うそく × × × 左側ひだりがわ × × × 左側さそく × × × 右腕みぎうで ○ ○ ○ 右腕うわん ○ ○ × 左腕ひだりうで × × × 左腕さわん ○ ○ ○ 「…

右左

北・南などを調べたので、今度は右・左に関する語をちょっと調べてみます。○は項目あり、×は項目なし、です。 明鏡 三国 新明解 岩波 右側みぎがわ ○ × × × 右側うそく × ○ × × 左側ひだりがわ ○ × × × 左側さそく × ○ × × 右腕みぎうで ○ ○ ○ ○ 右腕うわん …

岩波:南国

岩波国語辞典の話の続きです。 前回は「北東」などがないということを書きました。 今度は「南国」がないという話です。当然「北国きたぐに」も。 あってもいい言葉ですよねえ。「南洋」もなし。「南方」もなし。 岩波の辞典には「北方(領土)」ということ…

岩波:北東

岩波国語辞典についての話です。 「北東」が項目としてありません。「東北」も。 方角はいらないという判断です。そうかなあ。 驚いたのは、「南北」もないこと。「南北問題」も「東西南北」もこの辞書ではわからない。 「東西」はあります。この辺の判断の…

自動詞・他動詞(3)

自動詞と他動詞の話の続きです。 これまでの結果と、さらにいくつかの動詞を加えて表にしてみました。 新明解 明鏡 三国 岩波 持ち寄る 自 他 他 他 喜ぶ 自 他 自 他 怖がる 自 他 なし 自 焦る 自 自他 自 自 忍ぶ 自他 自他 自他 他 頼る 自他 (自)他 自…

自動詞・他動詞(2)

自動詞と他動詞の話の続きです。 他の辞書もちょっと見てみます。岩波と三省堂国語を。 よろこぶ 五他 岩波 よろこぶ 自五 「合格を-」 三国 こわがる 五自 岩波 (三国 「こわがる」項目なし) あせる 自五 「成功を-」 三国 あせる 五自 「功を-」 岩波…

自動詞・他動詞

辞書によって自動詞か他動詞かの認定が違うという話です。 まず例を。 よろこぶ 【喜ぶ・《悦ぶ・《慶ぶ】(自五) (なにニ-/なにヲ-) よい事に出あって非常に満足し、うれしい(ありがたい)と思う。 親孝行をして、父の-顔が見たい 人に喜ばれる親切 人の注…

ゆるい・うまる

このところ、新明解のことばかり書いていて、どうもこのブログの筆者は、新明解が嫌いなんじゃないかと思われてしまいそうですが、そうではありません。 なぜ新明解のことをそんなに何度も書くかというと、それだけ何度も引いて、使っているからです。それで…

見つける・世話

細かい話を2つ。また新明解です。 みつける【見付ける】(他下一) その人が求めているものを捜し出したり ほしい(必要とする)ものが どこにあるかを知ったりする。 仕事を-〔=捜す〕 新しい彗星(スイセイ)を-〔=発見する〕 [新明解国語辞典第七版] 「仕事…

改造・消火

小さい話を二つ。まずは「改造」から。 改造 【改造】-する (他サ) 古くなって来た建物や不都合な部分の目立ってきた組織などに手を入れて、新しいものにすること。 「内閣-(人事)」 [新明解国語辞典第七版] この語釈だと、改造銃や改造バイクなどが含ま…

ひとみ

新明解の奇妙な語釈の話。 ひとみ 目の中心にある小さな円形の部分。医学的には瞳孔(ドウコウ)を指す。 〔広義では、目全体を指す。例、「つぶらな-/二十四の-/-を凝らす=一つの物をじっと見つめる」〕 青い-の目 [新明解国語辞典第七版] ざっと読むと、…

ICBM

ちょっとぶっそうなものについての話ですが。 話しのとっかかりは、また三国から。 ICBM 地上から発射する、射程が5500km以上のミサイル。大陸間弾道弾。 三省堂国語辞典 これで何ら問題ないように思うのですが、大辞泉を見てみると、 ICBM 大陸間弾道ミサ…

アイドリング

新明解がよいと思う項目を。 まず悪い例から。三国に登場してもらいます。 アイドリング 機械の、からまわり。エンジンの、からふかし。「-ストップ」 『三省堂国語辞典』 これは、何だか30年くらい前の語釈という感じです。 からまわり 前へ進まないで、車…

勝つ・負ける

また、新明解ですが、、、。 【勝つ】(自五) (だれ・なにニ-) 実力の違いを認めさせて、それ以上対抗することを断念させる。 「強い者が―とは限らない/議論では彼に勝てない/善は悪に― /勝てば官軍〔=戦いに勝った方が結果的には善い者とされる〕」 【負…

教わる・口語

変なタイトルですが、新明解の「教わる」を引いて不思議に思ったことを。 【教わる】(他五) 「教える」の受動形「教えられる」の口語形。 先輩(この本)から多くのことを教わった [新明解国語辞典第七版] と言うのを見て、つまり、「教えられる」は「口語」…

解説と説明

「解説」と「説明」はどう違うんだろうと思いました。 明鏡国語辞典 かい‐せつ【解説】名・他サ変 その物事の内容・本質などをわかりやすく説明すること。また、その説明。 「ニュースの要点を━する」「━者」 せつ‐めい【説明】名・他サ変 ある事柄の内容や…

新潮現代国語辞典の例文

ちょっとあいてしまいました。軽い話を。 新潮現代国語辞典(第二版)の例文がすごいという話を書いた続きです。 別の素晴らしい例文を。 愛する 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して〔日本国憲法〕 こういう例文を辞書に選ぶ編集者はすてきです。 も…

新潮現代国語辞典第二版

少し前に、アルファベットの「A」「B」や、ひらがなの「あ」「い」なども国語辞典の項目として立てるべきなんじゃないか、ということを書きました。 その時は、大辞林や広辞苑では項目として立てられているのを知っていたのですが、小型辞典でそうしている…

あいうえお(順)

ほとんどの辞書に項目としてなく、あったほうがいいと思われる言葉の一つです。 例外的にこれを載せている辞書は、私の知る限りでは、デジタル大辞泉です。(もちろん、ほかにもあるかもしれません。) あいうえお順 → 五十音順 という空見出しがあります。 …

藍と青

三省堂国語辞典で「藍」を引くと、 藍 〘植〙草の名。葉からとった染料は、青よりこく、紺よりうすい。「-色」 とあって、「青は藍より~〔青〕の[句]」を見よ、とあります。で、「青」を見ると、追い込み項目として、 青 (略)・青は藍より出でて藍より青…

鉛分

新明解国語辞典第七版 えんぶん 鉛分 鉛の成分。 え?「鉛の成分」って、鉛じゃないんですか? 成分 その物を構成している個個の物質(元素)。(新明解) なんですから。 隣の項目を見てみると、 えんぶん 塩分 海水や食品などに含まれている塩類(の量)。 …

ちいさい「っ」

また続きです。日本語の仮名の一つ一つを国語辞典の項目として立てるかどうかという話。 三省堂国語辞典は、「っ」という項目を立てていて、それはいいのですが、内容がどうも変です。 っ つまる音(オン)。促音(ソクオン)。また、そのかな。カタカナでは「ッ…

昨日の続きです。 ひらがなをどうするか。例えば「あ」を国語辞典の項目とするか。 広辞苑、大辞林は項目としています。(大辞泉は大辞林とほぼ同じ) 広辞苑 あ ①母音の一つ。口を広く開き、舌を低く下げ、その先端を下歯の 歯茎に触れる程度の位置におき、…

パイアール二乗

表題の「パイアールにじょう/じじょう」は、中学を卒業した日本人のほとんどが知っている(聞いたことはあるが、何だか忘れた?)表現だと思うのですが、どうでしょうか。 そして、これは立派な日本語だとも。(念のため:円の面積の公式です) で、「パイ…

アーバン

三省堂国語辞典の残念な項目を。 (名)〔urban〕都市。都会。「-ライフ〔=都市生活〕」 これは手抜きと言わざるをえません。 まず、「アーバン」は名詞とは言えません。名詞とは、 1 格助詞が付いて主語や補語になる。 2 「-だ/です」が付いて述語に…

他の省庁

「もんかしょう」の続きです。 最後の所に、「国交相・国交省」について、三省堂国語辞典は手元にないので調べられない、と書きましたが、調べてみたら、予想通り、ちゃんとのっていました。 国交省 ←国土交通省。こくこうしょう。 国交相 〔文〕国土交通大…

もんかしょう

文部科学省を略して「文科省」といいますが、大臣のほうも「もんかしょう」になるはずだな、と思って辞書を引いてみました。 明鏡・新明解・現代国語例解は、 もんかしょう 文科省 「文部科学省」の略 ということで同じでした。「文科相」はありませんでした…

アーベント

各種の国語辞典の最初のページを見比べて、いろいろ面白いと感じることを発見しているのですが、今日は「アーベント」について。 「アーベント」の原語がドイツ語で、「夕方(・晩)」を指すことはどの辞書も一致するのですが、さて、日本語としては何を意味…

アーメン

「アーメン」という外来語について、原語は何かということを考えてみます。 一般的な示し方の例として、明鏡国語辞典の項目を書き出します。 アーメン[amenヘブライ](感)キリスト教徒が祈りの終わりなどに 唱える言葉。▽確かに、そうでありますようにの意…

岩波国語辞典と英語

ずいぶん時がたってしまいましたが、しらぬ顔して続けます。 岩波国語辞典に「英語」という項目がないことに気がつきました。 これは、「国語辞典マニア」の間ではよく知られたことなのでしょうか。 (などと、自分は「国語辞典マニア」でないような書き方を…

「舟を編む」「辞書を編む」

タイトルの前者は三浦しをんの有名な小説の題名で、後者は飯間浩明の光文社新書の本の題名です。 「舟を編む」は気にはなっていたのですが、まだ読んでいません。内容的に関心がありすぎて、落ち着いて楽しめないだろうという気がするためです。それに、どう…

「恋」など:ちょっと複雑な問題

昨日の「異性」がらみの話ですが、、、。 「新明解」で有名なのは「恋愛」の語釈ですが、「恋」もほぼ同様です。 こい[1]コヒ【恋】 (一)特定の異性に深い愛情を抱き、その存在を身近に感じられる ときは、他のすべてを犠牲にしても惜しくないほどの満足…

「デートする」

「デートする」という、誰でも知っていることばをどう説明するか。 自サ変 異性と日時や場所を決めて会うこと。「恋人と━(を)する」 [明鏡国語辞典 第二版] (親しい)男女が日時を決めて会うこと。 (岩波国語辞典) これでいいでしょうか。だめですよね。…