ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

「通る」・「通す」

今回はかなり早く次の回を書くことができそうです。

「通る」と「通す」の関係について。

こういうことを誰か論文に書いたりしているのかどうか知りません。

先に検索してみるべき? まあ、いいでしょう。自分で考えたことを書いてみましょう。

 

「通る」はたとえば次のような用法があります。

  人が 所を 通る   客が玄関を通る

対応する「通す」には、二つの可能性があります。

  人が 人を 通す   主人が客を通す

  人が 所を 通す   主人が玄関を通す

なんか「玄関」だとぱっとしませんね。

  守衛が訪問客を通す   守衛が門を通す

ぐらいのほうがいいでしょうか。

   「A氏が来ても、門を通してはいけない。待たせておけ」

のような使い方です。

二重のヲ格は言いにくいでしょう。

  ?守衛が客を正門を通す

 

抽象的な事柄だとどうなるか。

   法案が議会を通る

   (今期の議会で)委員長が法案を通した

   (その法案は)委員長がむりやり議会を通した

ぐらいになるでしょうか。

   ?委員長が法案を議会を通した

という二重ヲ格になるところを、「議会で」「法案は」という場所格と

主題化という方法でさけています。

   議会が法案を通した

というのもありますね。これはなんなんだ? 受け身みたいで。

「通した」主体をどう考えるか。ふむ。

 

自他の文型の対応というのは、

   木が倒れた  木こりが木を倒した

ぐらいだとわかりやすいのですが、場所のヲ格が出てくると、どうもやりにくくなります。

ま、今日はこんなところで。続けることが大事。

saburoo