小さい話を二つ。まずは「改造」から。
改造 【改造】-する (他サ)
古くなって来た建物や不都合な部分の目立ってきた組織などに手を入れて、新しいものにすること。 「内閣-(人事)」 [新明解国語辞典第七版]
この語釈だと、改造銃や改造バイクなどが含まれません。もともとその用途でないもの(改造銃)や、新品を作り直す(改造バイク)のですから。
かい‐ぞう【改造】名・他サ変
造り変えること。「車庫を書斎に━する」「内閣[バイク]の━」 [明鏡国語辞典 第二版]
このそっけない語釈の方が、いい用例を示していることで、一応わかりやすいだろうとは言えます。しかし、例えば板チョコを買ってきて、溶かしてハート形の枠に入れてバレンタインに、、、などというのも「造り変えること」ではあるでしょうが、「改造」とは言えないということをどうするか。やはり、語釈が漠然としすぎているのでしょう。
かいぞう 改造 建物・車・組織などを部分的につくりなおして、もととちがうものにすること。「倉庫の-・内閣-」 『三省堂国語辞典』
用例に「改造銃」と「改造車」か「改造バイク」がほしいところですが、まあ、この解説のほうがいいだろうと思います。「部分的に」というのも、的確な表現です。
もう一つ。「消火」について。
【消火】-する (自他サ)
1燃えている火を消すこと。2 火災を消すこと。また、火事が消えること。 「-剤」 [新明解国語辞典第七版]
語釈がおかしいわけではありませんが、なぜ、「火災」と「火事」を使い分けるのでしょうか。
か さい【火災】 「火事」のやや改まった表現。 [新明解国語辞典第七版]
ふむ。どうもわかりません。「火災が消える」とは言いにくい、ということでしょうか。
明鏡はというと、
しょう‐か【消火】名・自他サ変
火や火事を消すこと。「━器・━活動」 [明鏡国語辞典 第二版]
自他と言いながら、語釈は他動詞扱いです。「火・火事が消えること」は省略です。
この語に関しても、三国がいいです。
しょうか 消火(名・自他サ)①火を消すこと。火が消えること。(←→着火・発火)②火事を消すこと。火事が消えること。鎮火。「-器・-栓・-ポンプ」(←→出火) [三省堂国語辞典 第七版]
反対語を出すと、ずっと情報量が増えます。なるほど、という感じです。こういう小技が、三国の持ち味、きめ細かさです。