ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

雑草

三省堂国語辞典で「あかざ」という項目をみると、

 

  あかざ 〔植〕雑草の名。昔は食用。

 

とあります。ずいぶんそっけないなあ、と思います。それに、「雑草」なんて語を語釈に使っていいのかなあ、とも。

で、「あかざ」をほかの辞書で見ると、

 

  畑・荒れ地に自生する一年草。若葉は食用、茎はつえにする。〔アカザ科〕「-の羮」(新明解) 
 

このぐらい書いてくれると、辞書を引いたかいがあります。「つえにする」は面白い情報です。もちろん、「雑草」ではありません。

では、「雑草」とは。

 

  雑草 田畑にはえる、農作物以外のいろいろの草。生命力の強いもののたとえに用いる。(三省堂国語)

 

え?「田畑にはえる」草だけ?

では、我が家の庭に生えるのは雑草でない? そんなバカな。

他の辞書を見てみると、

 

  栽培しないのにはえる、いろいろな草。(岩波)

 

ずいぶんあっさりした説明ですが、まあ、そうでしょうか。

 

  あちこちに自然に生えているが、利用(鑑賞)価値が無いものとして注目されることがない(名前も知られていない)草。(新明解)

 

まあ、このぐらいが常識的な理解でしょう。「注目されることがない」というところがいいですね。

それにしても、三省堂の編者は何を考えているのか。

他のいろいろな草はどうなっているのか、三省堂国語を引いてみました。(語釈は一部のみ。形などの情報は省略します)

 

  えのころぐさ  道ばたにはえる、イネの仲間の雑草

  つゆくさ  道ばたなどにはえる雑草
  なずな  道ばたなどにはえる野草。
  母子草  道ばたにはえる雑草の名。    

 

この中で、「なずな」の扱いの違いはなぜ?「道ばたなどにはえる」までは同じなんですけど。「野草」とは。

  

  野草 山や野にはえる草。

 

特に「雑草」との違いはないような。

いや、「山や野にはえる」草が「道ばたにはえる」のと、もともと「道ばた」専門の雑草との違いがあるのか。これらの草をよく知っている人なら、この三国の記述をナルホドと思うのでしょうか。

さらにほかの草を。


  はこべ  いなかの道ばたに多い雑草。  

 

なぜ「いなか」に限定されるのでしょうか。「いなか」ってどこでしょう。都市あるいは郊外の道ばたと、「いなか」の道ばたではやはり違うのでしょうか。


  仏の座  ①田のあぜにはえる野草。形はタンポポに似ているが、小形。
       ②道ばたにはえる野草。春、紫色の小さな花が咲く。
  なでしこ  野山や河原にはえる草。
  ふじばかま  野山にはえる草。

 

雑草か、野草か、草か。その区別の基準は何なのでしょう。ふじばかまの「野山にはえる草」とはつまり「野草」ですよね。

単に、それぞれの項目の執筆担当者による違いでしょうか。もしそうなら、編集者の仕事とは何なのでしょう?