ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

アーティスト

三省堂国語辞典の外来語の語釈は、単に訳語を当てるだけのときがあります。その外来語をわざわざ使う意味合いを解説してほしいのですが。

 

 アーティスト ①芸術家。「フラワー-」②歌手。演奏家。「ソロ-」△アーチスト。

 

これでいいと考えているとすると、ちょっと語感が疑われます。「アーティスト」は単なる「歌手」ではありません。

 

  明鏡 芸術家。特に、美術家。近年、歌手・演奏家の意で使うことも多い。

  岩波 アーチスト 芸術家。特に、美術家・(ジャズやポピュラー音楽の)演奏家。アーティスト。

  例解新 芸術家。とくに、芸術の新しい分野で活躍する人や、ポピュラー音楽の歌手・演奏家など。

 

明鏡は三国に近い説明です。岩波は「演奏家」に限定を加えています。例解新の「芸術の新しい分野」とは何かが問題ですが、ともかく、ただ訳語で置き換えるだけでなく、それぞれ情報を付け加えて、より正確に説明しようとしています。

日本語の「芸術家」「演奏家」などにはない、何か別の意味合いが加わるからこそ、「アーティスト」という外来語が使われるのでしょう。単に、ことばとしての目新しさだけではないはずです。