ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

あいびき

軽い話を。

 

  あいびき(名・自サ)〔古風〕恋人どうしがこっそり会うこと。密会。

                三省堂国語辞典

 

この語釈はいいのですが、用例がほしいところです。「古風」な雰囲気が感じられるような。

 

  〔古風な言い方で〕愛し合っている二人が人目を忍んで会うこと。ランデブー。密会。忍び会い。「女と-する」

                 明鏡国語辞典

 

ふむ。ちょっとそっけない用例ですが、「逢い引きする」という動詞の相手には「ト格」の名詞をとる、という文法的な情報です。まじめな明鏡。

 「ランデブー」は、人目を忍ばなくてもいいように思うのですが、それはいいことにして。

 

  恋をしている男女がこっそり会うこと「-を重ねる」〔やや古風なことば〕

                  学研現代

 

そうですね。逢い引きが一回限りで終わっては寂しい。何度も会ううちに思いが募るのです。「こっそり」会うことを繰り返していると、周囲に気がつかれないか、という恐れも強くなってきて、気持ちが高まってきます。

 とどめは、現代例解の次の例。

 

  「神社の境内で逢い引きする」  現代例解国語辞典

 

これです! やはり、逢い引きは雰囲気が大切です。神社の境内、いいですねえ。いかにも「古風」です。縁結びの神様だったりして。

こういう例文をのせる編集者は、みずからの経験に基づいて例文を考えているのでしょうか。