続けて、愛に関わることばを。
愛好(名・他サ)好きで、したしむこと。「-者・平和を-する」
「平和が好きで、したしむ」? 「音楽を愛好する」なら、「好きで、したしむ」でいいかもしれませんが、「平和を」だと、どうか。
親しむ ①したしくする。「友と-・ファンに親しまれる」②その中に、とけこんで楽しむ。なじむ。「自然に-」 三国
なんか違うような。
「平和を愛好する」というのは、もっと積極的な態度でしょう。何かと好戦的なことばを投げつける、人をあおるような風潮に対して、静かに、しかし決然とした態度で「平和を愛好する」と言い切る、そういう態度だと思います。(ちょっと思い入れが過ぎるでしょうか?)
愛好 好ましいものとして、その物事を積極的に受け入れること「平和を-する/音楽-家・切手-者」 新明解
「積極的に」は賛成ですが、「受け入れる」でいいかどうか。
「平和」の場合は「積極的に高く評価し、尊重する」こと、ぐらいでどうでしょうか?
それを「受け入れる」と言うんだ、というのが新明解の編者の考えかもしれませんが、少し違うように思います。
まあ、この辺は、とらえ方の相違、と言ってもいいでしょうか。三国の「好きで、したしむ」よりはずっといいように思います。
三国も、「平和を-」という例でなく、「音楽/自然を-」ぐらいの例だったら、「好きで、したしむ」でよかったのだろうと思います。
「平和を-」という例をあえてあげるのならば、それに合った語釈を考えてほしいと思うのです。
もう一つ。
愛慕(名・他サ) 〔文〕愛ししたうこと。「-の念」 三省堂国語辞典
これは「愛慕」の漢字を訓読みしただけです。意味はまさにそのままなんだから、それでいいじゃないかと言われればそうかもしれませんが、どうもねえ。(他の辞書も、ほとんどすべて「愛し慕う」です。)
できれば、「愛し慕う」のあとに、それを別のことばで説明してほしいと思います。例えば、次のように。
特定の相手に対して深く心を寄せ、できることならいつもそば近くにいたいと思うこと。 新明解
この語釈でぴったりかどうかはおいて、「愛」も「慕う」も使わずに、という努力を買います。
新明解は、こういうところが好きです。
ただし、新明解は用例がありません。三国の「-の念」だけというのも、まったくないよりはましですが、不十分すぎます。
私が、「愛慕(する)」ということばに関して知りたいことは、どのような人が、どのような対象に対して、このことばを使えるのだろうか、ということです。