ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

ウイニング-

外来語シリーズです。英語か和製語かという問題。

三省堂国語辞典から。

 

  ウイニング-(造語)〔winning〕勝利を得る。
   ・-ショット〔winning shot〕〔球技で〕勝利を決定づける一打。きめだま。

 

「ウイニング」は「造語成分」で、他の語と共に使われるものです。
「ウイニングショット」を、三国は英語としていますが、新明解・明鏡その他は和製英語とします。大辞林大辞泉も。

 

  新明解 〔和製英語 ←winning+shot〕〔テニスで〕それによって必ず勝つという、得意の打ち方。決め球。〔野球で〕その投手が打者を打ち取るのに最も得意とするたま。決め球。

 

旺文社は用法によって違うと言います。


  旺文社〔winning shot〕①テニスやゴルフなどで、勝負を決める得意の打ち方。②<和製英語>野球で、その投手が打者を打ち取るときの得意な球。決め球。

 

テニス・ゴルフなどと野球で分け、後者は和製とします。野球は「打つ(shot)」わけではありませんから、これが正解のように思えますが、どうでしょうか? (ただし、ゴルフの場合は「得意の打ち方」でしょうか。ふつうの打ち方をして、それが入った場合に「ウイニングショット」というのではないでしょうか。)

 

 「ウイニングボール」というものもあります。

 

  ・-ボール〔和製winning ball〕〔野球で〕守るチームの勝ちが決まったとき、最後にアウトにした、その時のボール。 (三国)

 

三国も、他の辞書も、これは和製としています。集英社はゴルフでの用法をあげています。

 

  集英社 ②(ゴルフで)優勝者が最終ホールでカップに入れたボール。

 

最後に、「ウイニングラン」。

 

  ・-ラン〔winning run〕①〔野球などで〕決勝点。②〔陸上競技などで〕勝者が、観客の称賛にこたえるため、競技場を一周すること。 (三国)


 新明解は、②は「日本語用法。英語ではvictory lapという」と書いています。大辞林も②は「日本での用法」。
大辞泉は三国と同じで、英語をつけ、注釈なし。つまりどちらも英語の用法だとします。
現代例解は、どちらも「洋語」つまり和製とします。(「洋語」というのは次の②の最後の「日本で作った」ものです。)


   洋語 ①西洋の言語。(⇔和語・漢語) ②外来語のうち、西洋からはいってきたことば。外来語の大部分はこれ。外来語を組み合わせて日本で作った単語もふくむ。 (三国)


けっこう辞書によって判断が違うものです。このようなことは、それぞれの専門家に聞けばどちらかに決まるはずのものではないでしょうか。