ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

2020-01-01から1年間の記事一覧

ウエーブ・ウイング

新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。 (2017-08-11 ウエーブ 2017-08-20 ウイング) niwasaburoo.hatenablog.com サッカーなどでの「ウエーブ」について。新明解第七版が独特だった項目です。 標準的な書き方を三…

貞淑・おてんば

新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。(2020-09-27 貞淑・貞操)(2020-10-01 おてんば) 第七版の記述から。 貞淑 〔妻が〕夫の不身持ちや乱暴にかかわらず、家庭を守り、あくまでも 夫を立てて従順を宗(ムネ)と…

新明解第八版:医・予報

新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。 (2017-06-24 医)(2013-07-08 予報する) 短い話を二つ。 医 患者に適切な指示を与え、適薬を与えたり 必要な手術を施したり して病気を治すこと(技術)。「-は仁術/-者…

新明解第八版:絵・絵画

新明解国語辞典の第八版が出ました。ちょっと出費ですが、早速購入しました。 このブログで以前問題としてとりあげた新明解の項目がどうなっているか、再点検してみようと思います。 最初は、どう見ても編集のミスと思われる項目から。 ・絵 (「2019-10-30 …

独和・独話

新明解国語辞典のよくわからない項目の立て方について。 どくわ ①【独和】〔←独和辞典 〕ドイツ語の意味・用法を日本語で説明した対訳辞書。 ②【独話】-する (自サ) 1 ひとりごと(を言うこと)。2 おおぜいの前で、自分だけで話すこと。 [新明解国語辞典…

中日・日中

新明解国語辞典から。 中日 1彼岸の七日間のまんなかの日。春分・秋分の日。⇒なかび。2中国と日本。 日中 〔朝・夕方と違って〕日が高くのぼっている間。〔午前十時から午後三、四時ごろまでを指す〕 新明解 「中日」には「中国と日本」とあるのですが、「…

小人・中人・大人:続き

前回の続きです。前回は、新明解・明鏡・岩波・三国の4冊の国語辞典について、「小人・中人・大人」の説明に問題があるのではないか、ということを書きました。それらに対して、小学館日本語新の説明がいいのではないか、ということも。 まずは上の5冊以外…

小人・中人・大人

タイトルの3つの語をどう読んだでしょうか。 「こびと」と「おとな」と、その間の「中人」、これはどう読むんだろう? なかびと?あるいは、「しょうじん」「たいじん」はいいとして、「ちゅうじん」? そう思った人は、私と同レベルの漢字力です。 この3…

厚い

また新明解国語辞典から。 厚い 比較の対象とする(一般に予測される)状態と比べ、表層と下底の間に幅が あり、その部分が何かによって満たされている(ととらえられる)様子だ。 「月は-雲に隠れたままとうとう出て来なかった/-胸板に頭を預ける/ -壁…

広い

新明解国語辞典から。 広い 1 何かをするのに十分過ぎるほどの空間があると認められる様子だ。 「庭(部屋)が-/-グラウンド/-屋敷」(2・3の用法略) 新明解 「何かをする」ことは「広い」と感じるために必要でしょうか。 広い宇宙 広い海 広い空 宇…

偉そう

新明解国語辞典のいいところを。 えらそう 実体(内実)はそれに値しないのに、あたかも自分が偉い存在であるかのようにふるまう様子だ。「-な態度/-に説明する」 新明解 語釈、用例共にいいんじゃないでしょうか。 「偉そう」は、他の「~そう(だ)」の…

基本的

新明解国語辞典から。 基本的 その物事の存在を支える根幹にあって状況の変化などにかかわりなく、一貫しているととらえられる様子だ。「-な練習に重点を置いた合宿訓練/中央銀行の-な使命/財政改革の-な方針/与野党の見解が-に一致する 」 新明解 ち…

義務的

新明解国語辞典から。 義務的 義務だからやむを得ず(形式的に)する様子。 新明解 多くの場合は「やむを得ず」かもしれないけれど、「義務教育」というのは「義務的な教育」であるわけで、これは「やむを得ず」ではないでしょう。 したがって、単に、 義務…

内弁慶

用法が拡張されている語の話。 内弁慶 外ではいくじがないが、家ではいばっている<こと/人>陰弁慶。 三国 家の中では威張るが、外に出るといくじがないこと。また、そのような人。陰弁慶。「━の外窄そとすばり」 明鏡 家の中でばかり強がっていて、外では一…

おてんば

新明解国語辞典から。 おてんば 女性としてのたしなみを忘れて ふざけさわぐ少女(女性)。 新明解 「女性としてのたしなみを忘れて」だそうです。批判的な新明解。 女らしいとされるしとやかさのないようす。また、そのような<少女/女性>。 おきゃん。おは…

貞淑・貞操

新明解国語辞典から。 貞淑 〔妻が〕夫の不身持ちや乱暴にかかわらず、家庭を守り、あくまでも 夫を立てて従順を宗(ムネ)とすること(様子)。⇔不貞 そうなんでしょうか。夫が「不身持ちや乱暴」でないと、「貞淑な妻」にはなれないのか。 私が「貞淑」という…

右・左

「教えて!goo」に「右・左」について投稿しました。 「右端」を国語辞典で引こうとすると、「みぎはし」ではなくて「うたん」で引かなくてはならないのはなぜか、という質問があり、それに答えたものです。 このブログで、かなり前に「右腕・左腕・右側・左…

殊勝・けなげ

明鏡国語辞典から。 殊勝 けなげで感心なこと。「無償で引き受けるとは━な心がけだ」 健気 心がけが殊勝なさま。特に、年少者や力の弱い者が、殊勝な心がけで努力するさま。「一家を支えて働く━な少年」 「殊勝」とは「健気で感心なこと」で、「健気」とは「…

執拗しつよう

新明解国語辞典から。 執拗 「しつこい」意の漢語的表現。「-に つきまとう」 新明解 「しつこい」と意味用法は同じで、その「漢語的表現」だという。では「しつこい」とは。 しつこい 1味などが濃すぎて、いつまでも不快な感じが口に残る様子だ。「-味」…

強烈・強力

久しぶりに。 「強烈」と「強力」はどう違うのか。国語辞典を見てみます。 強烈 堪えられないほど強い様子。「-な印象/-な個性の持主/-なパンチ」 新明解 「堪えられないほど強い」んだそうです。でも、 ゴッホの「ひまわり」を見た。強烈な印象だった…

同じ・違う

「同じだ」とはどういうことか。国語辞典がどう説明しているかを見てみます。まずは岩波の第八版から。(例などは適宜省略します) 同じ 1〔連体・ノダ〕これとそれとの間に区別ができない(区別するまでもない)。「-日の夜」「姉と弟の身長が-になった…

岩波八版:「語類概説」

岩波国語辞典の一つの長所は、付録に語構成と文法(品詞)の解説があることです。 第六版(2000)では「語構成概説」が4ページ、「語類概説」が5ページでした。 第八版(2019)の「語構成概説」は、最後に「図解」のようなものが増えたほかは同じです。 しかし…

岩波八版:音楽用語

音楽用語というものは、小学校あるいはそれ以前からなじみのあることばも多いのですが、まじめに考えるとどういう意味なのかわからず、かなり複雑で難しい理論的なもののようです。 以前、三国と三省堂現代新で音楽用語を少し調べたことがあります。(三国「…

岩波八版:愛する・ああ

岩波の第八版の検討です。 他の辞書で問題にした語を見てみます。 ・愛する三国と三省堂現代新で問題にした「愛する」を。 愛す 五他→愛する 愛する サ変他(略) 岩波 「愛する」の活用は「サ変」です。同じ意味で五段活用の「愛す」は「愛する」を見よ、で…

岩波八版:会話・あいだ・蹴る・営業

以前岩波の旧版で触れた語をもう一度振り返ります。今回の改訂でも変わらなかったところと、変わったところと。 まずは変わっていないところから。 ・会話ずいぶん前にとりあげた語で「会話」を。(2013-07-06 「会話する」) 会話 向かいあって話しあうこと…

なおかつ・なおさら

前回の続きです。 岩波第八版の「小型でありながら単なる言い替えにとどまらない語釈を」に関して、しつこく。 なおかつ《連語》<副詞的に>1そのうえにまた。2それでも、やはり。 なおさら《副(に)・ノダ》そのうえ、ますます。それにも増して。 岩波 「単…

岩波第八版(2):ゆるい・うまる

岩波国語辞典第八版の話の続きです。 「第八版刊行に際して」という「まえがき」に当たるものに、「小型でありながら単なる言い替えにとどまらない語釈を」という「第三版に際して」の一節が引用されています。 以前指摘した「単なる言い替えに」とどまって…

岩波第八版と「英語」

岩波国語辞典が第八版になりました。(2019年11月) 私は、ずいぶん前に岩波に「英語」という項目がないことについて書きました。 岩波国語辞典に「英語」という項目がないことに気がつきました。(「2015-04-17 岩波国語辞典と英語」) 今回、改訂されたと…

少ない

前回は「多い」について、連体用法に制限のある形容詞であることを書きました。 では、対義語の「少ない」はどうでしょうか。 まだ会場に残っている人は少ない。 ?少ない人がまだ会場に残っている。 この例の場合、やはり述語用法では問題なく、連体用法で…

多い

「多い」という形容詞は、特徴的な用法(の制限)がある語なのですが、ほとんどの国語辞典にはそのことが書いてありません。 (日本語教師にとっては、知っておくべき常識の一つです。) 例えば、 まだ会場に残っている人は多い。 この図書館は本が多い。 とは…