ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

岩波国語辞典と英語

ずいぶん時がたってしまいましたが、しらぬ顔して続けます。

 

岩波国語辞典に「英語」という項目がないことに気がつきました。

 

これは、「国語辞典マニア」の間ではよく知られたことなのでしょうか。

(などと、自分は「国語辞典マニア」でないような書き方をしていますが、

いやいや、国語辞典が心底好きな方、つまりマニアの方々はけっこういる

ようで、それも私などはとてもかなわないようなのめり込み方をして

いる方々のようなので、こんなことはとっくに知られていることなのか

と思うのです。)

 

また、「英国」がないのは、地名だから、ということでしょうか。

いや、「イギリス」がないのはともかくとして、「英国」は国語辞典

としてあったほうがいいのではないでしょうか。

 

では、「仏語」や「独語」はどうなのかと見てみると、

 

  「ぶつご 仏語 仏教の用語。さらに広く、仏教に由来する語。

    ▽「ふつご」と読めば、フランス語のこと。」

  「どくご 独語 ①〔名・ス自他〕ひとりごと(を言うこと)。

    ②〔名〕ドイツ語。」

 

という具合で、他の語に寄りかかって出されています。

「米語」はありません。

 

けれども、なぜか「英文」「英訳」はあるのです。

 

  「えいぶん 英文 ①英語でつづった文章。「-和訳」 

    ②イギリス文学。広く、英語による文学。「-科」」

  「えいやく 英訳 〔名・ス他〕英語に翻訳すること。その翻訳。」

 

ふむ。岩波の編者の考え方は、私の理解を超えています。

 

「漢字母項目」の「英」のところに、

 

   ③「英吉利(イギリス)の略。「英国・日英・英仏・英貨・英語」

 

という解説がありました。ここに「英国・英語」があるから項目としては

立てなくていい、というのでしょうか。

 

「英和」「和英」もありません。これは立派な日本語だと思うのですが。

1963年の初版の「はじめに」に、

 

  この辞書は、現代の、話し、聞き、読み、書く上での必要な語を

  収め、それらの意味・用法を明らかにしようとした。

 

とあります。「英語・和英」はそのような語だと思います。

 

岩波は、(新明解とはちがった点で)ときどき独善的です。