ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

あいうえお(順)

ほとんどの辞書に項目としてなく、あったほうがいいと思われる言葉の一つです。

例外的にこれを載せている辞書は、私の知る限りでは、デジタル大辞泉です。(もちろん、ほかにもあるかもしれません。)

  あいうえお順 → 五十音順

という空見出しがあります。

三省堂国語辞典は、「五十」の追い込み項目「五十音」に

  「ー順〔=アイウエオ順〕」

という用例があります。用例の中に出ている説明のためのことばが、項目として立てられていないのは、やはりまずいでしょう。

「あいうえお(順)」なんて、誰でも知っているから要らない、などとはもちろん言えません。それを言い出すと、多くのことばが辞書から消えてしまいます。

三国・新明解には、「いろは」の項目に「いろは順」が用例として示されています。「ABC」の項目には「ー順」という用例があります。

なお、三国には「いろは歌」が載せられていないのが残念です。明鏡、新明解にはあります。

岩波は、「いろは」の項に、「いろは歌」そのものは載せず、元になった涅槃経だけを載せるという、個性的な記述をしています。いろは歌ぐらい、みんな知ってるだろ、だからみんなが知らない元のほうを載せとくよ、ということでしょうか。岩波らしい。