また、新明解ですが、、、。
【勝つ】(自五)
(だれ・なにニ-) 実力の違いを認めさせて、それ以上対抗することを断念させる。
「強い者が―とは限らない/議論では彼に勝てない/善は悪に―
/勝てば官軍〔=戦いに勝った方が結果的には善い者とされる〕」
【負ける】 (自下一)
(だれ・なにニ-) 相手の強い力に立ち向かうことが出来ず自分の優位が保てなくなる(抵抗する気力を失う)。
「戦争(圧力)に-/試合に-/訴訟に-/誘惑(雰囲気)に-/腕力では彼に負けない〔=劣らない〕/
きょうのところは負けて〔=相手に従って〕おく/負けずにやり返す/暑さに-/-が勝ち」
[新明解国語辞典第七版]
そうでしょうか。今日負けても、明日はきっと勝つぞ、と思うんじゃないでしょうか。一回勝っても、次に負けるなんてことはよくあることで。
「実力の違いを認めさせて、それ以上対抗することを断念させる」なんて勝ち方は、相当の場合でないと。「相手に、30年は勝てないと思わせるような勝ち方をしたい」と言った野球選手がいたような記憶がありますが、まあ、それは、そのくらいの気持ちで行こう、というだけの話でしょう。
新明解は、他の辞書とちがった、とてもいい(世間で言う「面白い」ものではなく)語釈や用例のあげ方をすることがあって、感心することも多いのですが、このような、なにかズレた語釈もまた多くて、いったいどうなっているのかと思います。(山田忠雄の置きみやげでしょうか)
明鏡を見てみたら、こちらは、別の意味で話になりません。
か・つ【勝つ(▽克つ)】自五
争いごとや試合などで相手を負かす。勝ちを収める。
まか・す【負かす】他五
相手を負けさせる。~に勝つ。
かち【勝ち】名 勝つこと。勝利。「━を急ぐ」「負けるが━」
ま・ける【負ける】 自下一
相手と争って屈する。敗北する。敗れる。「戦争[裁判]に━」「決勝戦で韓国に━」
「賭かけで━」「判定で試合に━」 [明鏡国語辞典 第二版]
分かり切った言葉だから、他の語で言い換えておけばよく、それ以上の説明は要らないという判断でしょうか。
岩波も似たようなものです。
岩波国語辞典
勝つ 戦争・試合などで、相手を負かす。競争で、先を越す。「戦いに-」「相手に-」「裁判に/で-」
負かす 負けさせる。勝つ。「相手を-」
負ける 戦ってうちくずされる。相手より劣っていて、対抗できなくなる。「戦いに-」「敵に-」
「負ける」の「相手より劣っていて、対抗できなくなる」が一応の説明になっていますが、やはり、野球の3連戦などをどう考えるのか。
最初の試合で負けたら、「もう対抗できない」と考えるのか。
勝ち負けというと、戦争のような、負けるとしばらくは戦えなくなるようなことが頭に浮かぶからでしょうか。
日常的な勝ち負けというのは、あるルール(約束事)の中でゲーム・試合のようなことをし、その結果、「その時は」どちらがより優れていたかを、対戦者が(審判・観戦者を含めて)(一回ごとに)認め合うことでしょう。
ただし、以上のようなことが、語釈で短く、うまく書けるかどうかは別の問題で、とても難しいことだとは思いますが。
訂正(2020.12.8)
岩波の引用の所で間違いがありましたので、直しておきました。
戦争で、先を越す → 競争で、先を越す