ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

児童語

人に教えてもらった話なのですが、あまりにもわかりやすい話なので書いておきます。

三省堂国語辞典は、ことばの文体的な特徴を示すために、たとえば〔文〕〔話〕〔俗〕などの略語を使っています。この三つの例はそれぞれ、「文章語」「話しことば」「俗語」であることを示します。

表紙見返しの「略語表」の中に「文体」を示す略語の一覧があります。

そこに〔児〕というのがあり、「児童語」を示すということです。「児童語」とはどういう語なのでしょうか。凡例にあたる「この辞書のきまり」の中には特に説明がありません。

では、「児童語」という項目が辞書本文にあるのかというと、「児童」しかありません。

  児童 ①子ども。〔児童福祉法では、零歳から十八歳まで〕②小学校   

     に行って授業を受ける子ども。(←→生徒・学生)

ということは、「児童語」とは、「零歳から十八歳まで」または小学生の使うことば、なのでしょうか。まさか。

なぜ「児童」の項目の複合語として「児童語」がないのでしょうか。

似たようなことばとして、「赤ちゃん語」「幼児語」ということばもあるので、そちらを引いてみると、「幼児」の複合語として「幼児語」があります。

  幼児語  小さい子が話す、子どものときだけのことば。例、うまうま・ぶうぶう。

なるほど。これはよくわかります。「うまうま」「ぶうぶう」を引くと、それぞれ〔児〕という略語がつけられています。

  ぶうぶう 〔児〕①自動車。②ぶた。

しかし、「児童語」の略語として〔児〕を使っておきながら、辞書本文には「児童語」がなく、「幼児語」の項でその概念が説明されているというのは、、、どんなものでしょうか。

かんたんに言って、「ポカ」でしょう。

「児童語」はやめて、「幼児語」にし、略語は〔幼〕にする。そう直せばいいでしょう。

他の辞書も「幼児語」を使っています。(それで、三国はあえて「児童語」にした? しかしなぜ?)

 

  【幼児語】言語習得期にある幼児に対して養育者が、発音しやすいよ

    うにとの配慮から与える片言(カタコト)に似た表現。また、それを

    まねていう幼児の表現。「よしよし」を「ヨチヨチ」、「犬」を

    「ワンワン」と言うなど。

    〔広義では、小学校低中学年の児童の使う言葉をも指す〕

                 [新明解国語辞典第七版]

  あんよ ①「歩くこと」の意の幼児語。②「足」の意の幼児語

                 [新明解国語辞典第七版]

  ぶうぶう  幼児語で、自動車。  [明鏡国語辞典 第二版]