ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

あおむける

 

  あおむける ①表面を上へ向ける。(からだの)腹のがわを上にする。②顔を上げる。(⇔うつむける)[名]仰向け。「-になる」   三省堂国語辞典

 

まず①について。「表面」と言うけれど、何の「表面」なのか。「表面」とは何か。

このことば、私はあるところで「ひょうめん」と読んだら、ある人に「オモテメンと読むんじゃありませんか」と言われて、あちゃーと思いました。なるほど。確かに、「ひょうめん」と「おもてめん」では違いますね。勉強になりました。

「ひょうめん」だったら、対立するのは「内側・内面」ですよね。「上へ向ける」なんだから、「おもてめん:うらめん」の対立にしないと。

他の辞書を見ると、

 

  学研現代新  〔顔や物の前面を〕上に向かせる

 

「前面」と言っています。でも、「前面」だと当てはまらないものもあるんじゃないか。

 

   新潮現代 顔や体、物(の一部)を、上に向ける。また、裏返しや横向きになってい       るものを、起して、表面や全面を上に向ける。あおのける。  

 

「裏返しや横向きになっているものを」が重要です。もともと、普通の状態に置かれていたら「あおむける」ことはできないのです。

でも、次のような例もあります。

 

  現代例解  あおむけ 上を向けること。(略)「急須のふたをあおむけに置く」

 

名詞のほうを見出しにして、動詞は子項目にしていますが、この例はいいですね。「急須のふた」の場合は、「おもてめん」でも「前面」でもありません。「内側」を上に向けること、です。また、「裏返しになっていた」わけでもありません。

三国の、「(からだの)腹のがわを上にする。」という、この語がいちばんよく使われる場合は、「おもてめん」という意味合いと、「内側」という意味合いもあるのかなあ、と思います。

さて、どう説明したらいいのでしょうか。