(馬を)あおる
いくつかの辞書で「あおる」という動詞を見ていたら、「馬をあおる」という表現の説明がいろいろ違っていたので、ここに並べてみます。
それぞれ、「あおる」の一つの用法として「馬」のことをとりあげています。三国だけが「急がせる方法」を書いていません。
三国 〔乗っている馬を〕急がせる
これではどのようにして「急がせる」のかわかりません。物足りない感じがします。
現代例解 あぶみで腹を蹴って、馬を急がせる
広辞苑 鐙で障泥を蹴って馬を急がす
岩波 あぶみで、障泥をうって馬を急がす
あぶみ 鐙 馬具で、馬の鞍くらの両わきに取りつけて足を踏みかけて使うもの。▽「足踏あぶみ」の意。 (明鏡)
あおり 馬具の名。鐙(アブミ)と馬のわき腹との間に下げる、泥よけの皮(毛皮)。古来の用字は「{障泥}・{泥障}」。 (新明解)
「あおりを蹴る」のと、「腹を蹴る」のは結局同じことと考えていいのでしょう。映画などでよく見る動作です。
三省堂現代新 あぶみを踏んでウマを急がせる
大辞林 鐙を蹴って馬を進める
明鏡 〔古〕あぶみをけって馬を急がせる 古語という判断
「あぶみを踏む/蹴る」とはどういう動作なのでしょうか。下に向けて強く踏み込むのでしょうか。馬の腹を蹴るのではなく。
新明解 〔むち打ったりして〕馬を急がせる
新潮現代 手綱を操ってウマを急がせる
これははっきり違います。むちや手綱を使い、あぶみは出てきません。
さて、それぞれやり方が違います。どれかが正しいのか。それとも、「馬をあおる」のにはいろいろなやり方がある、ということでいいのか。
結局、三国はすべてに共通するところだけを書いているので、それはそれで正しいのだ、と言えるのでしょうか。