軽い話で。
鉛筆 粘土と黒鉛をまぜた芯を、細長い木で包んだ筆記用具。「色-・-けずり〔=鉛筆を削るための道具〕」 三省堂国語辞典
鉛筆の説明として、ひとまずこれでいいと思うのですが、「木で包んだ」というところ。あれは「包んでいる」のかなあ、と思いました。
新明解は「入れる」です。
筆記用具の一つ。細長い木の軸に、粘土を交ぜた黒鉛の芯(シン)を入れたもの。絵をかくのにも用いられる。「色-・ -画 ・ -削り」 新明解
新明解は「絵をかくのにも」と書いていますね。「鉛筆画」という例もあります。
「入れる」という辞書。他にもいくつかありました。
木の軸に、黒鉛と粘土でできた細長い芯しんを入れた筆記具。消しゴムで消すことができ、日常の筆記具として使われる。「━を削る」▽カラーのものは「色鉛筆」という。 明鏡
鉛筆の特長として、「消せる」ということがあります。それ以前の筆やペンに比べて、そこが便利だったわけですね。墨やインクも要らないし。でもまあ、それは「もの」の説明であって、「鉛筆」という「ことば」の説明としてどこまで必要かはまた別の話です。
他には、「はめこむ」という辞書があります。
木の軸の中に細い芯をはめこんだ筆記用具。黒色の芯は黒鉛・粘土を材料にしてつくる。 学研現代新
「軸」があって、そこに「芯」を「はめこむ」。なるほど。「入れる」よりもちょっと動きが具体的な感じがします。
「挟む」という辞書もあります。
筆記用具の一つ。黒鉛と粘土を混ぜたしんを木の軸で挟んだもの。赤・青などの色鉛筆もある。子供にも使えて使用範囲が広く、鉛筆書きは消しゴムで消すことができるのが特長。「-を削る」 集英社
この「挟む」が私にはいちばんしっくり来ます。(他のことばではダメだということではぜんぜんないのですが)
「子供にも使えて」というところもなんとなく好きです。
さて、「包む」でも「入れる」でも「はめ込む・はさむ」でも、何のためにそうするのかを、当たり前のことだけれど、はっきり書いたほうがいいんじゃないか。
日本国語大辞典は「(しんの)まわりを木などで補強したもの」としています。この「補強」という一言、いいと思います。(持ちやすく、握りやすくする、ということもあると思いますが)
ただ、「木で補強する」だけだと、「どのように」と聞きたくなります。
「はさんで補強する」がいいのでは、と思います。
この他に、特徴的な記述として、新選・旺文社は鉛筆の歴史を簡略に書いています。国語辞典としてどこまで必要かはともかく、豆知識として面白いです。
最後にもう一つ。用例のすごい辞書。言わずと知れた新潮現代です。近代文学からの実例で、「浮雲」「黒白」「墨東(綺譚)」「赤光」からの4例。
「ちから無く-きればほろほろと紅の粉が落ちてたまれり」[赤光] 新潮現代
「鉛筆」の用例にこういうのを出しますかねえ。やっぱり新潮現代はすごい。