「ワン・ツー・スリー」を順に見ていきたいと思うのですが、まず「ワン」から。
ワン 1一。ひとつ。「-コイン・-プッシュ」2一点。「-オール」 三省堂国語辞典
他の辞書も同じなのですが、「ワン」を名詞としていることに疑問を感じます。
名詞であるということは、次のような位置に現れうるということです。
1 AはBだ
2 AのB
3 Aが/を/と/へ ~する
文法用語でいえば、
1 名詞文の主題、名詞述語になる
2 名詞を修飾するばあい、「の」をとる
「名詞+の」という連体修飾(名詞修飾)を受ける
3 動詞に対して、格助詞「が」または「を」などをとって補語(格)になる
以上のような用法が「ワン」にあるかというと、どうも疑わしいと思います。
1 ワンは~だ ~はワンだ
2 ワンの~ ~のワン
3 ワンが/を/と/へ ~する
適当な例文が浮かびません。
「ワン」は、独立した語(単語)としては使いにくいのですね。
上の用例「-コイン・-プッシュ」のほかにも、多くの複合語の中で「ワン」は使われるのですが、それはつまり「造語要素」だということです。
三国は、名詞のような「語」と「造語成分(要素)」をきちんと区別しています。
ガール(造語)〔girl〕女の子。少女。(⇔ボーイ) 三国
「ガール」は、三国によれば「名詞」ではありません。単独で使われないからです。「ガールスカウト」とか、「キャンペーンガール」とか、複合語の中でのみ使われます。
反対語の「ボーイ」には、二つの用法があり、片方は名詞ですが、「男の子」の意味では、「ガール」と同じく「造語成分」です。
ボーイ〔boy〕1(造語)男の子。少年。(⇔ガール)2(名)〔ホテル・レストランなどの〕サービス係の男性。ウェーター。 三国
「あそこにいるボーイに頼んでみよう」と言えば、「男の子」に頼むのではなくて、「ホテルなどのサービス係の男性」に頼むのですね。40代のおじさんだったりするわけです。
「ガール」と「ボーイ」はこのように「造語成分」として扱っているのですから、「ワン」も同じようにすればいいと思うのですが、なぜそうしなかったのか。
「ワン」の、名詞としての使用例と言えそうなのは、
ワン、ツー、スリー
のように、数を数える場合がありますが、これはかなり特殊な場合なので、これをもって「名詞(数詞)」と言っていいかどうか、疑問が残ります。
次の問題。用例の出し方について。
「ワンコイン」は独立した項目としてあるので、そちらを見れば意味がわかるのですが、「ワンプッシュ」の意味はどうやったらわかるのでしょうか。
この辞書の利用者は、「ワン」の用法を知ろうとして、この項目を見ます。しかし、そこの用例の意味がわかりません。
「ワンプッシュ?」。「プッシュ」の項を見れば、「プッシュ」は「押すこと」だとわかるとしても、「ひとつ(一度?)押すこと?」。どういう場合に、どういう目的で?
意味のわからない用例です。
2の「一点」の「ワンオール」は、「オール」を見るとその2に、
2〔-オール〕〔テニス・卓球で〕得点が、どちらも同じ。「スリー-」 三国
という語釈があり、ここに気付けば、たぶんわかります。
それにしても、もう少しわかりやすい用例をつけてほしいものです。