「ワン」の次は「ツー」ですが、まずは「ワン」と「ツー」の項目としての立て方の話から。
前回、三省堂国語辞典は「ワン」を名詞としていますが、「ワン」は名詞とは言い難く、「造語成分」ではないか、ということを書きました。
他の辞書を見てみると、「ワン」や「ツー」を名詞、あるいは語としていない辞書があります。
明鏡国語辞典には「ワン」は名詞としてあるのですが、「ツー」の項目はありません。(「スリー」は名詞として項目があります。)
「ツーショット」「ツーピース」などの項目はあるので、「ツー」を造語成分として項目にすればいいのではないかと思います。
学研現代新国語辞典では、「ワン」は名詞としていますが、「ツー」は、
ツー《造語》「二つ」の意を表す。
と「造語成分」としています。(「スリー」は名詞です。)
この二つの辞書で、なぜ「ツー」だけが特別な扱いを受けているのか、私にはわかりません。「ワン」や「スリー」と特に違ったところがあるようには思えないので。
例解新国語辞典には「ワン」の項目はありません。「ツー」もありません。これらを「語」とは認めていないのでしょう。
例解新は、全体として項目数が少ないので、それらを造語成分として項目にする考えはないようです。複合語の「ワンクッション」や「ツーショット」は項目になっています。
さて、「ツー」の項目を見てみましょう。
ツー 二つ。トゥー。「〔自動車・冷蔵庫の〕-ドア・-シーター〔=二人乗りの車〕」 三国
三国は、「ワン」の用例とは違って、「ツー」の用例にはわかりやすく説明がついています。「ワン」の用例もこうすればよかったのに、と思います。
ツー〔two〕 二つ(の)。 新明解
新明解はこれだけです。何ともそっけない書き方です。「ワン」の項はたくさん書いてあったのですが。
ワン〔one〕1一つ。-ツースリー 2 一点。-オール 3〔野球で〕ワン ストライク。-スリー 4 ワンボール。ツー- 新明解
こういう書き方の差はどこから来るのでしょうか。執筆者の違いか、編集者の考え方によるのか。「ツーオール」の場合は、「二点」の意味になるはずですが。野球で「ツーツー」なら、「ツーストライク ツーボール」の意味になります。(すみません。現在は「ツーボールツーストライク」ですね。)
ですから、「ツー」の項も「ワン」と同じような書き方になっていいはずなのですが、なぜかそうなりません。
他の辞書は、新明解の「ツー」ような書き方が多いようです。「ワン」の項も比較的簡単に書かれています。明鏡の「ワン」は、
数のいち。ひとつ。 明鏡
これだけです。
さて、もう一つ、考えておきたいことは、三国の「トゥー」という書き方が示す「外来語の発音とその書き表し方」の問題なのですが、議論が長くなりそうなので、明日また書くことにします。