ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

スリー・フォー

「スリー」は問題が少ないようです。

 

  スリー   三。三つ。「-シーズン〔=春・秋・冬〕コート・-スピード〔=スピードを三段階に変えられること〕・ベスト-」     三国

 

これも用例に説明が付いていていいですね。ではなぜ、三国は「ワン」だけが不親切だったのでしょうか。

 

他の辞書を見ても、特に問題点を感じません。例えば明鏡は、こんな感じです。

 

    スリー 数の三。三つ。「━ピース(=三つぞろいの服)」   明鏡    

 

これは第二版ですが、初版ではこの後に、

  「-サイズ(=バスト・ウエスト・ヒップのサイズ)」

という用例がありました。用例としては削られたのですが、独立した項目に昇格していました。

 

  スリーサイズ 〔俗〕女性のバスト・ウエスト・ヒップのサイズ   明鏡

 

そうですね。「女性の」と限定しなければいけません。ただし、俗語とされました。

 

さて、「フォー」は「フォア」という別の表記があることが注意点です。

 

  フォー 四。四つ。フォア。「ベスト-・-ドア」
  フォア 1→フォー(four)。2四人でこ(漕)ぐボート(レース)。  三国

 

三省堂現代も同じです。この二冊は、「フォー」を数としての基本形としています。

「フォア」は「フォーを見よ」とし、ボートに関してはこちらの表記と使う、とします。

複合語としての使い方を見ると、「フォー」のほうが多いのですね。「フォアドア」とは言わないし、「ベストフォア」とも言いません。例外は野球の「フォアボール」です。これはこの形で固定しています。

しかし、他の辞書は「フォア」の形で項目を立てています。

 

  フォア 〔four=四つ(の)〕四人で漕(コ)ぐ、レース用のボート。  新明解

  フォア 数の四。四つ。フォー。2 四人漕ぎの競漕用ボート。また、それによるレース。フォアオール。  明鏡

  フォア 《フォー》四。四つ。2競漕で、四人こぎのボート。  現代例解

  フォア ボート レース用の四人でこぐボート。▽four(=四)   岩波

  フォア 四。四つ。フォー。2 四人でこぐレース用のボート。四本オールのボート。また、それで行うレース。フォアオール。 -フォアボール 野球で、四球。▽four と balls からの和製語。  学研現代

  フォア 四。よん。  新選
  フォア 1 四。2 ボートレース用の四人でこぐボート。  旺文社

 

ボートと野球が「フォア」だから、こちらを基本の形とする、ということでしょうか。

しかし、他の複合語は「フォー」なのだから、私は三国や三省堂現代のほうがいいと思うのですが、どうでしょうか。

(英語の発音から言うと、イギリス英語は「フォー」でよくて、アメリカ英語だと「フォーァ」ぐらいの感じかなあ、と英語の発音に自信のない私のいいかげんな感想です。)