ファイブ・シックス・セブン
外来語(英語)の数のシリーズです。次は「ファイブ・シックス・セブン」。
三省堂国語辞典。簡単ですが項目があります。
ファイブ 五。「ビッグ-〔=上位のもの<五つ/五人>〕」
シックス 六。「ビッグ-〔=大手六社〕」
セブン 七。七つ。→:ラッキーセブン。 三国
(なんで「セブン」だけに「七つ」があるのでしょうか。)
用例が「ビッグファイブ」「ビッグシックス」なのはなぜでしょう。「ビッグシックス」が「大手六社」って、どの業界の話ですか?
まあ、それだけ苦労してでも用例をつけよう、という態度はいいと思います。
新明解。「シックス」はずいぶんそっけないです。
ファイブ 五。「ビッグ-」
シックス 六。
セブン 〔seven〕 七。七つ。ラッキー-〔=⇒ラッキー〕2〔ラグビーで〕七人制のスクラム。 新明解
たしかに「シックス」って、用例になるような、ちょうどいい複合語がありませんね。
で、この「シックス 六。」でもいいと思います。
現代例解も新明解と同じようなものです。
ファイブ いつつ。五。
シックス 六。六つ。
セブン 七。「ラッキーセブン」
項目としてはちょっと寂しいですが、これらが日本語として、この語形で使われるのだということを示すためには、これだけでも十分です。これらの語、英語から来たにしては、
faibu sikkusu sebun
って、いかにも日本語、って感じがしません?
これらの語を巡る大きな問題は、他の辞書では、「ファイブ」「シックス」「セブン」の項目自体がないことが多いということです。
明鏡・三省堂現代新・学研現代新・岩波・旺文社。これらはこの三つの項目がありません。
新選は、「ファイブ」「シックス」はありますが、「セブン」の項はありません。
ファイブ いつつ。五。
シックス 六。 -判 写真で、たてよこ六センチメートルの大きさ。六六判。
なぜ項目がないのか。それ自体を名詞として使うことがなく、適当な複合語もない(少ない)からでしょう。
しかし、それなら「造語要素」としてでも項目をたてておくべきです。
何と言っても、日本語としてごく普通に使われているからです。特定の、使用頻度の高い複合語がなくても、その時その時に必要な、時には和製の英語もどきの複合語としてでも、「ファイブ・シックス・セブン」は使われています。それは、ネット検索をちょっとしてみればわかることです。
新明解や明鏡のような、いかにも寂しい項目でも、あるいは三国のように、いかにも無理をしてつけたような用例だけであっても、項目としてたてるべきだと思います。
英語の数の表現が日本語に入ってきて、日本語なりの語形・発音で使われていること、そして「ワン」のように、非常に多くの複合語で使われながら、しかし、単独の語として、名詞として使われることはほとんどないということを示すためにも、それらを項目としてたて、「造語要素」という限定を与えて示すことが必要だと思います。
非常によく使われながら、単独の名詞としては使われないというのは、例えば「カー car」もそうですね。
カーが走っている かっこいいカーがほしい
とは言えません。「カー」は、辞書では「名詞」とされることが多いと思いますが、やはり「造語要素」です。その違いは重要だと思います。
スポーツに関して、特に名詞としての用法を持った場合は別として、英語、または他の外国語の数を表すことばが「外来語」として日本語に入っているということを、そしてそれらは「造語要素」として使われるのだということを、国語辞典はきちんと示しておくことが必要です。