仕事とは何か。働くとはどういうことか。国語辞典の記述から考えてみます。
仕事 1からだや頭を使って働くこと。「-場・単調な-」2職業。「お-は何ですか」3報酬を得るために働くこと。「賃-」 (略)
働く 1仕事をする。「工場で-・働かざるもの食うべからず」 (略) 三国
三省堂国語辞典の説明は、「仕事とは、身体や頭を使って仕事をすること」です。
仕事 からだや頭を使って、働く(しなければならない事をする)こと。〔狭義では、その人の職業を指す〕
働く からだ・頭を使って、仕事をする。 新明解
仕事 1しなければならないこと。働くべきこと。2収入を得るための勤め。職業。
働く 仕事をする。また、生計を立てるために一定の職につく。労働する。 明鏡
新明解と明鏡によれば、「働くとは、しなければならないことを(身体や頭を使って)する」ことです。そして「仕事」とは、その「しなければならないこと」です。
しかし、「しなければならないこと」というのは、あまりにも広すぎます。
親は子どもを食べさせ、育てなければならない。犬を飼うなら、散歩させなければならない。それらは「仕事」でしょうか。多少ひゆ的な言い方として、それらは「親としての仕事」「飼い主としての仕事」と言えないこともないけれども、では、それは「働く」ことなのか。
子どもは宿題をしなければならないし、病人は薬を飲まなければならない。
また、「納税」は国民としてしなければならないことでしょうが、それ自体は「仕事」でも「働く」ことでもありません。
「しなければならないこと」は、説明として不適当というわけではないでしょうが、もっと限定が必要です。
「仕事」の2つ目、あるいは新明解の「狭義」として出てくる「職業」を見ておきましょう。
職業 それで暮らしをたてて行くための仕事。職。 三国
職業 生活を支える手段としての仕事。職。 新明解
職業 生計を立てるために従事する仕事。職。「━に就く」 明鏡
結局、「仕事」です。「暮らし・生活・生計のための仕事」を「職業」という。
他の辞書もだいたい似たようなものです。「仕事は働くこと」あるいは「しなければならないこと」で、「働くとは仕事をすること」です。
「右」や「左」をどう定義するかには知恵を絞るのに、こういう人間の生存に基本的なことばについてもっと考えないのはなぜでしょうか。
岩波を見てみましょう。
仕事 職業や業務として、すること。また、職業。
職業 生計を立てるために日常従事する仕事。
業務 毎日継続して行う商売・事業などに関する仕事。 岩波
結局、「仕事とは仕事として、すること」です。
働く 目的にかなう結果を生ずる行為・作用をする。ア 作業・労働をする。「工場で-」「汗水たらして-」 岩波
「目的にかなう結果を生ずる行為・作用をする。」と言われても、抽象的すぎて何だかわかりません。おそらく、これだと「プラモデルを作ったり、ゲームをクリアする」のも当てはまってしまうのでは? つまり、「遊ぶ」と区別できません。「汗水たらす」のも、ジョギングやサッカーに当てはまります。
結局、「働く」を適切に限定するのは「労働をする」なのでしょう。
労働 体を使って働くこと。特に、賃金・報酬を得るために、体力や知力を使って働くこと。▽体力を使う方を指すことが多い。 岩波
やはり、「働くこと」で、元に戻ります。
国語辞典では、「仕事」と「働く」の意味はわからないようです。さて、どう考えたらいいのでしょうか。