ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

固有名詞

三省堂現代新国語辞典第六版の検討を続けています。

この辞典の特徴の一つは、固有名詞を項目としている小型辞典だということです。

「この辞典を使う人のために」には、

 

  固有名詞は、日本と外国の、おもに文学関係の人名・作品名を収めています。

 

とあります。

「あ」の初めのほうには「会津八一」が項目としてあります。

また、安部公房の「赤い繭」という項目があります。それほど有名な作品ではないと思いますが、高校の国語教科書に載せられているため、特にとりあげられているのでしょう。

もちろん、「羅生門」「山月記」「舞姫」なども項目になっています。「こころ」は言うまでもありません。

安部公房」本人も「阿部一族」と「阿部次郎」の間にあります。(阿部次郎なんて今の高校生に必要な名前なんでしょうか?)

 

その次のページには「アヘン戦争」があり、おや、これはどうして項目になっているんだろう、と思いました。「文学関係」ではなく、「歴史」の項目です。

戦争関係をひいてみると、「第二次世界大戦」「太平洋戦争」はさすがにありますが、「第一次世界大戦」はありません。

ちょっと不思議に思ったのは、「日清戦争」「日露戦争」がないことです。「アヘン戦争」よりも重要な項目だと、私は思うのですが。「西南戦争」はなくてもいいでしょうか。

ぱらぱらめくっていると、「空海」がいるのに気付きました。「親鸞」もいます。

しかし、「最澄」はいません。「法然」「日蓮」もいません。(「天台宗」「浄土宗」「日蓮宗」という宗教名はあります。)

どういう基準で選ばれているのか不明です。空海親鸞を選んで、最澄日蓮を落とす理由は、私にはわかりません。前者が「文学関係」ということもないでしょう。鑑真や聖徳太子はいませんでした。

もしかして、と思って「丸山真男」を探してみたら、やはり項目になっていました。「であることとすること」(『日本の思想』)は高校教科書の定番教材だそうですから。

 

文学関係の固有名詞が多く入っていることは、高校の国語教育に配慮するということで当然のことですが、歴史用語・宗教家の名前がどのような基準で選ばれているのか知りたいと思いました。

 

 [追記]

 空海親鸞だけがなぜか項目になっていると書きましたが、道元がいました。見るのを忘れていました。ほかにも宗教家がいるかもしれません。「正法眼蔵」の項はありませんでした。