ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

重さ・重量

三省堂現代新国語辞典から。

 

  重さ 1重いこと。重い程度。「責任の-」2重量。

  重量 1ものの重さ。[類] 目方 ⇒[比較] 質量

     2とても重いこと。「-級」[対]軽量   三省堂現代新

 

「重さ」とは「重量」で、「重量」とは「ものの重さ」のことである、と。見事に循環しています。まあ、国語辞書にありがちなことです。

しかし、改訂「第六版」で、こういう項目がずっと見過ごされてきているのはまずいと思うのです。

「重量」と「質量」の比較があるようなのでそちらを見ます。
                                
  質量 [物理で]物体がもっている、物質の量。基本単位はキログラム。
    [比較][質量]物体ごとに一定。
       [重量]重力によって変化する。無重力状態では、重量はゼロになる。

 

なるほど。「質量」は「物質の量」で、「物体ごとに一定」。
それに対して「重量(=重さ)」は、「重力によって変化する」。そこはわかります。「質量」との違いはわかるのですが、では、「重量(=重さ)」とは何なのか。「重力によって変化する」のはなぜなのか。かんじんなところは、やはりわかりません。

他の辞書を見ます。 


  重さ ②ものを、台ばかりにのせてはかる数値。目方。重量。〔物理学では、物体に加わる重力の大きさ。無重力状態では、重さはゼロになる〕→:質量   三国

  重さ 2〔物理学で〕その物体に作用する重力〔=地球の引力〕の大きさ。〔その物体の質量に重力の加速度を掛けたものに等しい。一般には、質量のことを「重さ」とも言う〕「-を増す」   新明解

 

同じ出版社の他の辞書を見れば、「重力の大きさ」を「重さ(重量)」と言うのだ、とわかります。重力によって「重さ(重量)」が生じるのですね。だから「重力によって変化する」のです。当然のことだとわかります。

なぜ三省堂現代新だけ、説明が不充分なのか。