ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

上下・高低

前にも書いたことがある「上下」の話を、三省堂現代国語辞典でも見てみます。(「2017-11-18   上」)

 

  上  高いところ。「山の-」

  高い  下からの長さ(高さ)が大きい。

  下  位置が低いこと(ところ)。「-のへや・-を向く」

  低い  下からの長さ(高さ)が少ない。   三省堂現代新

 

「上」は「高い」を使って説明。「高い」は「下」を使う。「下」とは「低い」ところ。では「低い」とは? 「下」を使って説明。

堂々巡りですね。

三省堂国語辞典も同じです。このことは前にも書きました。

 

  上  ①高い<ところ/地位>。「山の-・階級が-・-〔=上層部〕の意向」(⇔下)

  高い  下からの<長さ/へだたり>が大きい「-山・背が-・空高く飛ぶ」

  下  位置が低い<こと/ところ>。「-のほうへおりる」

  低い  下からの<長さ/へだたり>が小さい。「-丘・背が-・天井が-」   三国

 

誰もこんなわかりきったことばを調べない、というのはその通りですが、もうちょっと工夫してもいいんじゃないでしょうか。

 何度も改訂しているのですから、改訂の際に、ちょっと考え直して、少し変えてみようという気は起きないものでしょうか。

 

前に書いた時は、新明解も明鏡も岩波も同じで、他の辞書も同じようなものだ、と書きましたが、一つだけ、少し違う辞書がありました。見落としていました。

 

  下  物が落ちていく方向。位置の低いところ。

  上  物が落ちていくのと反対の方向。位置の高いところ。

  落ちる  ものが、自然の力によって、高い場所をはなれて低い場所にさがる。   例解新

 

「ものが落ちていく方向」というのは、自然の中の観察で、絶対的な一つの方向であることがわかります。(ただし、「落ちる」の説明の中で「高い」「低い」を使ってしまうので、結局循環してしまうのですが。)

この説明は、ほかの辞書にないものでした。