多い
「多い」という形容詞は、特徴的な用法(の制限)がある語なのですが、ほとんどの国語辞典にはそのことが書いてありません。
(日本語教師にとっては、知っておくべき常識の一つです。)
例えば、
まだ会場に残っている人は多い。
この図書館は本が多い。
とは言えても、
?多い人がまだ会場に残っている。
?この図書館は多い本がある。
と言うと、かなり不自然です。
つまり、「多い」は述語用法では制限がありませんが、連体修飾(名詞修飾)の場合は、使いにくい場合があるのです。
では、どう言うかというと、
大勢の人がまだ会場に残っている。
多くの人がまだ会場に残っている。
この図書館にはたくさんの本がある。
この図書館には多くの本がある。
などと言えばいいわけです。
しかし、「多い+名詞」が常にダメなわけではありません。
知人が多い人が会場に残っておしゃべりを続けている。
会の運営について言いたいことが多い人が会場に残って~
図書館で挿し絵が多い本を探した。
これまでに借りた人が一番多い本はどれだろう。
など、名詞の前の「多い」自体が「述語」であるような形、つまり「節」(連体修飾節)になっていれば不自然でなくなります。
日本語学習者には、
「多い」は名詞の前において「多い人」とは言えません。
かわりに「多くの人」と言います。
というような説明をしています。「どうして?」と聞かれたら、「例外です」と言ってすませます。(ほんとに、どうしてなのかはわかりません。何か研究論文があるのでしょうか。)
国語辞典の中でこのことに触れているのは、私が見た中では現代例解だけでした。
多い (略)▽「多い本がある」の形ではいえず、「多くの本がある」という。 現代例解
これだけですが、ああ、わかっている人がいるな、と思いました。
こういう情報も載せておいてほしいと思います。