ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

強烈・強力

久しぶりに。

「強烈」と「強力」はどう違うのか。国語辞典を見てみます。

 

  強烈 堪えられないほど強い様子。「-な印象/-な個性の持主/-なパンチ」                      新明解

 

「堪えられないほど強い」んだそうです。でも、

    ゴッホの「ひまわり」を見た。強烈な印象だった。

 というのは、「堪えられないほど強い印象」でしょうか。

「強烈なパンチ」なら、「堪えられないほど強い」のかもしれませんが。

 

   力・作用などが強く激しいさま。「━なにおいが鼻を刺す」「━な印象を受ける」                       明鏡
    力・作用が強くて激しいさま。「―な印象」  岩波

 

とりあえず、このくらいでいいんじゃないでしょうか。新明解の勇み足。

 

次に「強力」を見ます。

 

  強力 力・作用などが強いこと。「改革を━に推進する」「━なエンジン」                     明鏡
    力・作用が大きいこと。強い力・作用。「―な味方」 岩波
    力や作用の強いこと(様子)。力強い様子。-な指導力  新明解

 

明鏡と岩波は「強烈」とほとんど同じですね。「強烈」のほうが「激しい」ことを除いて。

新明解の「堪えられないほど」も「激しい」の言い換えだと考えれば、この3冊、基本的に同じです。

 

「強烈」と「強力」の違いは、強さの違いでしょうか?

 「強烈な印象/個性/体験」などは「?強力な印象/個性/体験」とは言いにくいでしょう。
単に「力・作用などが強い」、あるいはその強さがより「激しい」だけではないのです。
また、「強力な敵/国家」は「強烈な敵/国家」というとちょっと変です。
「強力な支援/サポート」も「強烈な」では言いにくいでしょう。何が違うのか。

「強力なパンチ」は、そのパンチが強いものであることを表すだけですが、「強烈なパンチ」と言うと、それを受ける側の評価が入るのでしょう。「強烈な印象」や「強烈な体験」もそれを経験した人の感想です。

そのことをはっきり書いているのが例解新です。

 

  強烈 相手にあたえるショックが非常につよい。[用例]強烈な印象。[類]激烈。                      例解新

 

「ショック」というのが適切かどうか。心に強く残るもの、なんですが、外にいいことばはないでしょうか。

「相手にあたえる」というのも、「強烈な体験」には合いません。

 

それでも、例解新のとらえ方がいいだろうと思います。

不十分ですが、改訂案として。

 

   (それを受けた人が感じる)力・作用・印象などが強く激しいさま

 

新明解と例解新は同じ出版社なのですが、参照していないのでしょうか。