ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

新明解第八版:絵・絵画

新明解国語辞典の第八版が出ました。ちょっと出費ですが、早速購入しました。

このブログで以前問題としてとりあげた新明解の項目がどうなっているか、再点検してみようと思います。

 

最初は、どう見ても編集のミスと思われる項目から。

・絵 (「2019-10-30   絵」)

 

   絵 「絵画」の口頭語的表現。(多数の用例略)    新明解第七版・八版

 

第七版も第八版も同じです。では、「絵画」とは。

 

   絵画 「絵」の意の漢語的表現。(例略)  新明解第七版・八版

 

これはちょっと。編集者がこれでいいと思っているわけではないでしょう。

以前の記事では、第六版と第五版の記述を紹介しました。

第六版までは、「絵」の項に詳しい語釈があったのです。

 

   絵 視角と感性でとらえた現実の世界の事象や心に描いたイメージを、線や色彩によって素材の面に表わしたもの。また、その(芸術)作品。〔広義では、映画・テレビなどの映像をも指す〕(例略)     新明解第六版  (「絵画」は七版と同じ)

 

まさか、編集者はこの語釈を不要と考えて削除したのではないでしょう。

以下は、私のまったくの推測です。

 

第六版の「絵」の長い説明は、漢語的表現である「絵画」の項におくのが適当だと考え、「絵」のほうには「「絵画」の口頭語的表現」という説明をおくことにした。(つまり、詳しくは「絵画」の項を見よ、ということです。)
しかし、その削った長い説明を「絵画」のほうに移さなければいけないのに、なぜか、忘れてしまった、ということではないでしょうか。それ以外に考えられません。

 

さて、八版でも修正されていません。九版ではどうなるでしょうか?