新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。
(2020-01-10 OG・OB)
前回に続けて、外来語の原語問題です。それと、用法説明の問題点と。
オービー[OB]〔←old boy〕→オールドボーイ
オールドボーイ〔old boy=校友〕1卒業生のチーム。オービー。2老選手。
オージー[OG]1〔←office girl〕女子事務員。
2〔和製英語 ←old+girl〕〔OBからの類推〕その学校の女子の先輩(卒業生)。
新明解第七版
オービー[OB]〔←old boy〕→オールドボーイ[1] 第八版
七版と八版の違いは、「オービー」の項目で、参照指示の「→オールドボーイ」の後の[1]だけです。
「オービー」という略称は、「オールドボーイ」の一つ目の用法に限る、という限定が加わりました。
さて、外来語の原語の問題に入る前に、まず用法自体の説明の問題を二つとりあげます。
「オールドボーイ」の「1卒業生のチーム」という用法は、一般的なものでしょうか。
私は、この新明解の項目を見るまで、そういう用法があるとは知りませんでした。
私の見た中でこの用法をあげているのは、三国と三省堂現代、そして新明解だけでした。
三省堂現代は、
オービー[OB]1〔←old boy〕1卒業または退職した男性の先輩。[対]OG
2 卒業生のチーム。「-対現役の試合」 三省堂現代
として、「オービー対現役の試合」という例をあげていますが、これはむしろ「オービー(のチーム)対現役(のチーム)の試合」の省略した形と考えたほうがいいのではないでしょうか。
新明解のもう一つの問題は、三省堂現代の[1]の用法、「オービー」ということばが使われる普通の用法(と私は思うのですが)である「卒業または退職した男性の先輩」という用法が書かれていないことです。
これはなぜなのでしょうか。他の辞書には皆あります。また新明解の独自性、です。
(私は、単なるポカ、書き漏らしではないかと疑っています。)
さて、原語の問題です。
新明解も三省堂現代も、「オービー」は英語とみなしているようです。
しかし、明鏡は「old boyには卒業生・同窓生の意があるが、英語圏ではOBは使わない」と述べています。
つまり、「old boy(old girlも)」自体は英語ですが、「OG・OB」という省略形は英語では使われないということです。
「ウィズダム英和辞典第2版」(2007)には、old boyの項にわざわざ(×OBと略さない)という注意書きがあります。日本人のやりがちな間違いなのでしょう。(OGも同じです。)
新明解は、「オージー」の「女子の卒業生」については「和製英語」としています。これはいいのですが、「女子事務員」のほうには問題があります。
「office girl」自体は英語にあるのですが、「OG」と略すのは日本の用法のようです。
意味も、英語では
office girl 《やや古》(会社の)雑用係の少女 ウィズダム英和辞典
であって、「女性事務員」ではありません。
以上、新明解の「オービー・オージー」の項目にはいろいろと問題があります。