ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

ホットドッグ・ホットケーキ

新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。(2019-11-16 ホットドッグ 2019-11-17 ホットケーキ・パンケーキ)

 

軽い話です。まず、ホットドックから。

新明解だけがちょっと独自の説明をしている項目です。

まずは標準的な三国の記述から。

 

  〔米hot dog〕温めたソーセージをパンの間にはさんだ食べもの。ケチャップやからしをぬる。    三国

 

これでいいだろうと思うのですが、新明解はちょっと違います。

 

  細長いパンに切れ目を入れ、ソーセージをはさんでオーブンであたためて食べるもの。  新明解第七版・八版

 

「ソーセージをはさんでオーブンであたためて食べる」。しかし、これだとソーセージが温まるまでにパンが焦げてしまいそうです。

他の辞書は、「焼いたソーセージ」または「熱いソーセージ」のどちらかが多いです。

 

  焼いたソーセージなどをはさんだ  明鏡
  焼いたソーセージなどを挟んだ   現代例解
  焼いたソーセージを挟んで     旺文社
  熱いソーセージなどをはさんだ   岩波
  熱いソーセージをはさんだ     三省堂現代
  熱いソーセージをはさんだ     学研現代
  熱くしたソーセージをはさんだ   新選

 

ソーセージの「熱さ」に言及しない辞書。

 

  ソーセージや野菜を挟んだ     集英社  

 

これだと、HOT dog にならないような。

まあ、何にせよ、食べておいしければいいのですが。

 

次は、ホットケーキとパンケーキです。

これも、新明解がちょっと面白いです。

 

   〔hot cake〕小麦粉・卵・砂糖にふくらし粉を加えて水でとき、鉄板で平たく丸く焼いたもの。みつ・バターをつけて食べる。

   〔pancake〕小麦粉に牛乳や卵を入れ、フライパンや鉄板で焼いた、ホットケーキに似た、薄い菓子。

                     新明解第七版・八版

ホットケーキは「水でとき」、パンケーキは「牛乳」を入れています。この違いは意図的なものでしょうか。他の辞書は皆、どちらも「牛乳」です。

新明解は八版でも同じです。検討の結果、このままでいいということになったのでしょうか。

 

以前の記事では、パンケーキとホットケーキの違いについて、各辞書の記述を元にいろいろ考えています。
(軽い話なので、辞書の記述の正確性云々の話ではなく、冗談半分でしたが。)

新明解は、パンケーキが「薄い」こと以外に、「水」と「牛乳」が重要な違いと考えているのでしょうか。さらに、ホットケーキのほうには「ふくらし粉」を入れ、パンケーキには「菓子」と書いていることも。

 

前回は参照しなかった大辞泉wikipedia の解説も引用しておきます。

 

  ホットケーキ   大辞泉

   小麦粉にベーキングパウダー・卵・牛乳・砂糖などを加え、鉄板で丸く平たく焼いた洋菓子。バターやシロップを塗って食べる。

   [補説]焼きたてを食べるところからホットケーキ(温かいケーキ)という。パンケーキと同じものであるが、バターやシロップを塗って食べる、甘いものをホットケーキ、糖分を控え、ベーコンやスクランブルエッグなどをのせて食べるものをパンケーキと呼ぶ傾向がある。

 

  ホットケーキ(抜粋) wikipedia

   ホットケーキ(米: hotcake)とは、小麦粉に卵やベーキングパウダー、砂糖、牛乳、水などを混ぜ、フライパンで両面を焼いた料理。形状としては、円盤形ないし低い円柱形をなすことが多い。

   英語圏では広く「パンケーキ(pancake)」と呼び、イギリス風では膨張剤を入れない薄めの、クレープに近いものを指すが、アメリカ風ではメープルシロップなどをかけた厚めのものを指し、これを「ホットケーキ(hotcake)」などと呼ぶ。

    小麦粉に鶏卵、砂糖、牛乳または水、ベーキングパウダーを加えた生地を用いるのが基本で、日本では菓子のような甘めの配合が主流。塩やバターなどの油脂を加える例もある。   wikipedia  

 

パンケーキの「イギリス風では膨張剤を入れない薄めの、クレープに近いもの」というところ、新明解が「ふくらし粉」を書かなかったことに対応しているようです。

「牛乳」と「水」の件は、どちらでもいいようですが、新明解があえて分けて書いたのは、何かわけがあるのでしょうか。