ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

新明解第八版:「日本語形」(2)

前回に続いて、新明解第八版の「日本語形」という用語について書きます。

 

外国語の単語が日本語に入り、「外来語」として使われるようになる時、発音や形が変わります。(意味も変わることがありますが、今は「形」のことを問題にします。)

その変わり方が何らかの特徴を持つ時、「日本語形」という言い方でそれを示す、というのが新明解の編集方針のようです。

しかし、それは「編集方針」には書かれていません。どういう場合に「日本語形」とされるのか。

前回、「日本語形」とされる根拠がわからない語の例として「カーソル」をあげました。

おそらく、発音の問題だと思うのですが、ではどう書けば「日本語形」でないのかわかりません。

次の語はどうでしょうか。


   コンマ 〔commaの日本語形〕  新明解第八版

 

これはなぜ「日本語形」と見なされるのか。

この語は、新明解の版によって判断が違います。

 

   第三版 〔comma〕

 

第三版では普通に英語から来た語とされています。

 

   四版  〔commaの文字読み〕

 

〔commaの文字読み〕とされています。つまり「コンマ」は正しい発音ではない?

英語の辞書を引くと、「カンマ」のような発音と、「コンマ」のような発音が並んでいます。

どちらもあるのですが、新明解の編集者が参考にした(?)英語辞典は「カンマ」のほうしかなかったのでしょうか。

第五版から現在の八版まで「日本語形」という判断をしています。それでいいのでしょうか。

 

同じような発音をする語で、「コンファレンス」という語があります。

私は、英語を習った時、「カンファレンス」のような発音をしたように思います。

英語辞典を見ると、「カン~」も「コン~」もあります。どちらでもいいのです。

 

   コンファレンス〔conference〕(学術的な)会議。カンファレンスとも。  新明解第八版

 

こちらは「日本語形」とも「文字読み」ともされていません。


また別の例で、

 

   シャツ 〔shirtの日本語形〕

   シーツ 〔sheetの日本語形〕  新明解第八版

 

という例があります。どうして「日本語形」とされるのか。「ツ」が問題なのでしょうか。

 

似たような発音の語で、

 

   ダーツ 1〔dart
   カツレツ 〔cutlet〕  新明解第八版

 

には、何も注釈はなく、英語から入った語、とされているだけなのです。

どうにも、新明解の編集者が「日本語形」とする際の基準がわかりません。