新明解国語辞典第八版の項目を検討します。このブログで以前とりあげたものです。
(「2019-12-04 愛人・情夫・情婦」)
第七版と第八版の比較から。
愛人 1愛する人。2「情婦・情夫」の婉曲な表現。
情夫 〔芸者・ホステスなどと〕内縁関係にある男性。
情婦 〔正業についているとは思われない人と〕内縁関係にある女性。 新明解第七版
愛人 1愛している人。また、「情婦・情夫」の婉曲な表現。2人を愛すること。「敬天-」
情夫 愛人関係にある夫以外の男性。
情婦 愛人関係にある妻以外の女性。 新明解第八版
いろいろ変わりました。
「愛人」は、1と2に分けていた用法を一つにまとめ、「愛する人」を「愛している人」にしました。
2の用法を新しくたてました。「敬天愛人」という例を出していますが、これ以外にこの用法で使われる例があるのでしょうか。でもまあ、情報が増えたのはいいことでしょう。
さて、「情夫・情婦」のほう。七版の個性ある、しかし偏った語釈から、ずっと大人しい語釈になりました。(七版の「内縁関係」については、前回の記事であれこれ考えました。)
しかし、「愛人」の説明に「「情婦・情夫」の婉曲な表現」としておいて、その「情婦・情夫」の説明で「愛人関係にある」という表現を使っては、結局なんだかわかりませんね。
この「改訂」をした人は何をどう考えたのでしょうか。ともかく、第七版の不適切な語釈をやめる、という目標が達成されればそれでいい、と考えたのでしょうか。
七版の「内縁関係」と八版の「愛人関係」は、同じような「関係」なのでしょうか。それとも、七版の説明は間違っていて、八版で正しくなったのでしょうか。
内縁 婚姻届を出していないために、法律上の夫婦とは認められない男女関係。「-の妻/-関係」 新明解第八版
この説明だと、婚姻届を出せば、「法律上の夫婦」と認められるような状態なのでしょう。そうなら、私の理解では、「愛人関係」とはまったく違います。つまり、七版の説明は間違っていた、ということになります。新明解の編者もそう考えているのでしょうか。
「情夫・情婦」という語の実際の使われ方、つまり意味は、正直言って私にはよくわかりません。これらの語が使われるような本をあまり読んでこなかったので。(昔なら松本清張あたりでしょうか。)
「「情婦・情夫」の婉曲な表現。」などと言ってすまさないで、わかりやすく説明してほしいものです。
前回の記事では、「愛人」については現代例解の説明がいいのではないかと書きました。
愛人 愛している異性。情人。▽現在では、情婦、情夫の語を避けて、多く不倫の関係や金銭の授受を伴う男女関係の相手をいい、「恋人」とは区別して用いる。 現代例解
「不倫」または「金銭の授受を伴う」です。はっきり書いています。
今回も、改めて国語辞典の「改訂」とは何なのだろうか、と考えてしまいました。