たぶん・間違いなく
前回の記事で、「たぶん」と「間違いなく」の確信の程度の違いについて少し述べました。
私にとってはその違いははっきりしているので特に辞書を見ていませんでしたが、念のため、辞書の記述を少し並べておきます。
たぶん 副《多く下に推量を表す語を伴って》断定はできないが、そうである可能性が高いという話し手の気持ちを表す。おそらく。おおかた。たいてい。「━合格するだろう」「━仕事はあと一時間で終わる」 明鏡
(副)そうなる可能性が十分にあると予測する様子。「明日は-晴れるだろう/-そうなるに違いない」[文法]多く、文末に推量の意を表わす「だろう」「ようだ」「らしい」などの語を伴う。 新明解
〘副〙おそらく。たいてい。「―大丈夫だろう」 岩波
「小型でありながら単なる言い替えにとどまらない語釈を」(「第八版刊行に際して」)という岩波は「単なる言い替え」でしかありませんが、それはともかくとして。
「可能性が高い」「可能性が十分にある」と言うと、かなり確信があるかのようですが、明鏡と岩波に「おそらく」が類義語として挙げられているように確信度は低いものです。
と書いてみて、「おそらく」の辞書記述はどうなのだろうと見てみたら、ちょっと驚きました。
おそらく 副《多く、下に推量の表現を伴って》そうなる可能性が高いと推測する気持ちを表す。おおかた。「━彼は来ないだろう」「━彼は反対なのだ」 明鏡
〘副〙推し測って考えると。多分。「―来ないだろう」「この案は―承認されるに違いない」「―は直る見込みのない故障」▽恐れることには、の意から。 岩波国語辞典
私の語感では、「おそらく」は、「そうなるだろう」とは思いながらもかなりそこに疑いを含んだ語なのですが、明鏡と岩波にはそのようなことは書いてありません。
(副)〔文語の四段活用の動詞「恐る」の未然形+接辞の「く」〕そうならないかもしれないという、幾分かの疑念・ためらいの気持をいだきながらも、その実現を推測する様子。「-不可能だろう/この分では-雨だろう」 新明解
新明解は私の語感と近いですね。ちょっと安心。
「おそらく」に関してこの新明解の記述をよしとするなら、「たぶん」についても同じことが言えると考えます。つまり、「幾分かの疑念・ためらいの気持」がありうる、と。
「まちがいなく」を項目としているのは、以上の三冊では新明解だけでした。
まちがいなく (副)その事がどの点からみてもそうでしかないと判断できる様子。「これは-彼のやったことだ」 新明解
まちがいない 形 物事の予測や判断が確実である。確かだ。「彼の成功はまず━」「絶対に━」 副詞的にも使う。「この曲は━・くモーツァルトだ」 明鏡
(「まちがい」の項の用例)「―なく(=確かに)お届けします」 岩波
「どの点からみてもそうでしかない」「確実」「確かだ」「確かに」とあり、「可能性が高い」とはかなり違うと言っていいでしょう。
やはり、前回の話で触れたように、「たしか」の語釈に「間違いなく。たぶん。」と二つのかなり違う語をたんに並べるのは問題があるのではないでしょうか。