ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

呼び:三国の「名詞形」

短い話です。

三省堂国語辞典は、動詞の(連用形の)「名詞形」を[名]で示します。例えば、

 

  呼び寄せる (他下一)近くへ呼ぶ。呼んで、来させる。「電報で-」[名]呼び寄せ。   三国

 

のようにして名詞形を示します。

 

それはいいのですが、次の「呼び」の用例はおかしいと思います。

 

  呼ぶ(他五)1(大声で)相手の名前など(略)[名]呼び。「-に行く」  三国

 

「-に行く」のところに入るのは名詞ではありません。動詞のただの連用形です。

これを名詞と考えると、

 

   仕方ないから、本物を見せに行きました。

   川へ洗濯しに行きました。

   あれじゃあ、わざわざ殴られに行ったようなものだ。

 

などの「見せ」「洗濯し」「殴られ」なども名詞になってしまいます。これらを名詞とするのは、どう考えても無理でしょう。

名詞「呼び」とは、どういう場合に使うのでしょうか。別の用例が必要です。