ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

三国第八版:雑草

三省堂国語辞典第八版が第七版からどう変わったか、このブログでこれまでにとりあげてきた項目を見てみます。

 

「雑草」について。

niwasaburoo.hatenablog.com

七版で「あかざ」という項目を見たとき、ずいぶんそっけない説明だなあということと、語釈に「雑草」なんて語を使っていいのかなあ、とも思いました。

 

  あかざ 〔植〕雑草の名。昔は食用。   三国第七版

 

新明解を見ると、

 

  あかざ 畑・荒れ地に自生する一年草。若葉は食用、茎はつえにする。〔アカザ科
      「-の羮」   新明解第七版 

 

さすがに「雑草」ではありませんでした。

 

では、「雑草」とは。

 

  雑草 田畑にはえる、農作物以外のいろいろの草。生命力の強いもののたとえに
     用いる。  三国第七版

 

これはダメでしょう。我が家の庭に生えるのは雑草でないことになります。

 

第八版では、

 

  あかざ 道ばたなどにはえる野草。戦後の食糧難の時代には食用にした。成長した
     くきは、つえに使う。

  雑草 田畑や庭、道ばたなどにはえる、じゃまな草。〔生命力の強いもののたとえ
     に用いる〕  三国第八版

 

「あかざ」は「野草」になっていました。

「雑草」は、「庭、道ばた」にも生えるようになりました。

「じゃまな草」とはまあ。そうなんですけどね。すると、「あかざ」は「じゃまな草」から「野草」に格が上がった?

 

七版では、いろいろな草の語釈に「雑草」という語がつかわれていました。(語釈はかなり省略します。)

 

  えのころぐさ  道ばたにはえる、イネの仲間の雑草。

  つゆくさ  道ばたなどにはえる雑草。

  母子草  道ばたにはえる雑草の名。   

  はこべ  いなかの道ばたに多い雑草。  三国第七版

 

八版を見ると、「えのころぐさ」と「つゆくさ」はそのままでした。「母子草」と「はこべは「~野草(の名)」に書き換えられていました。

語釈に「雑草」ということばを使っていいと考えているのか、そうでないのか。

この辺の編集はどうなっているのでしょうか。