ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

手がはやい

短い話。

明鏡と新明解のそれぞれ一つ前の版から。

 

  手が早い 1物事をするのが早い。2すぐに暴力をふるう。「口より━」3異性と
     すぐに関係をもつ。「━男」[注意]「はやい」を「速い」と書くのは誤り。
                            [明鏡 第二版]

 

  手が速い 1 処理の手順に むだが無く、速く仕事を終える様子だ。
     2すぐに相手に手を出す傾きがある。A暴力を振るう。B 女性と関係を持つ。
                           [新明解 第七版]

 

明鏡は「手が速い」と書くのは「誤り」としていますが、新明解は「速い」としていました。(他の多くの辞書は「早い」としています。)

 

さて、それぞれ最近改訂され、「第三版」「第八版」になって、どう変わったでしょうか。

明鏡の第三版は、微妙なところで変化がありました。

 

  手が早い 1物事をするのが早い。2すぐに暴力をふるう。「口より━」3異性など
    とすぐに関係をもつ。「━男」[注意]「はやい」を「速い」と書くのは誤り。

 

「異性など」の「など」が加えられていました。なるほど。

 

では、新明解は。

 

  手が早い 1 処理の手順に むだが無く、速く仕事を終える様子だ。
     2すぐに相手に手を出す傾きがある。A暴力を振るう。B肉体関係を持つ。

 

「早い」になっていました。これは、新明解が「誤り」を認めたということでしょうか。

もう一つ、「女性と関係を」が「肉体関係を」に変えられています。これは?

明鏡の「など」と同じような配慮によるものでしょうか?

それと、第七版では「(男が)女性と関係を」ということだったのだろうと思いますが、第八版では「(女が)」もありうるということでしょうか。

こういう微妙なところの改訂は、妄想・邪推の余地が大きくて楽しいです。