このブログを始めたころ、「痛める」という動詞について書いたことがあります。「痛める」というのはどういう意味かはっきりしない、という話でした。(2013-03-14「痛める」/2013-03-24 「痛める」続き)
例えば、ナイフで手を切って「手を痛めた」と言うか、木登りで落っこちて足を折ったら「足を痛めた」と言うか。どうも言わないんじゃないか、と。
どうも、「痛める」というのは、筋肉か関節か、つまりははっきり外から見え
ない部分を「痛くした」場合じゃないか。それも、骨折ほどひどくはなく。
というのがぼんやりした結論でした。
(「痛く[した]」というのは、何もしないのに腕が痛くなってきたら「痛くした」とは言わない。何かそれとわかるような原因(ぶつけたとか、ひねったとか)があって、その後「痛くなった」場合に、「痛くした」と言うだろうから、ということです。「痛める」も同じ。この事は、前の時は書きませんでした。)
辞書を引いてみると、例えば、
痛める 1〔事故などで〕痛くする。「ひじをー」(以下略) 三国七版
これじゃ何だかわかりません。どういう事故で、どういうけがなのか。
痛める 1体のある部分に損傷や故障を起こす。悪くする。「転倒して腰をー」
「歌いすぎて喉をー」[表現]「自分のおなかをー・めた子」のように、肉
体的苦痛をいう言い方もあるが、多くは体の損傷や故障をいう。 明鏡
「損傷や故障」だと言っています。「転倒して」「歌いすぎて」とその原因を書いていて、三国よりは詳しいけれど、私の疑問にはぜんぜん答えていません。
最近、小学館日本語新に次のような記述があることを知りました。
痛める 1体に痛みや故障を起こす。[例]自分のお腹を痛めた子/腰を痛めて
休む。(以下略)
[類語]「いためる」「傷つける」の異同
(略)この二語は、体の一部を悪い状態にしてしまう意を表す点で共通する。
「いためる」は、体のある部分を痛くする、あるいは悪くする意だが、外
からはわかりにくい状態で、しかも意図的でない場合にいう。(略)
ねんざ、骨のひびなど、外見上の傷でない場合は、「いためる」を用いる
のが自然。 小学館日本語新
やはり辞書はあれこれ調べてみないといけませんね。前の記事の時は、小学館日本語新までは調べていませんでした。
「外からはわかりにくい状態」というのは、私の直感と一致します。信頼している辞書にこう書いてあると安心します。また、意図的でない。なるほど。
十冊くらいの辞書を見た中で、私がちょっと考えて気付く程度のことが書いてあったのが一冊だけというのは、まったく寂しい現状だと思います。