マザー・ファーザー
短い話を二つ。
まず、前回は英語から来た「ママ」をとりあげたので、ついでに「マザー」も見てみましょう。
マザー〔mother〕1母親。(⇔ファーザー)2〔宗〕女子修道院の、院長。 三国
マザー ①母。母親。「シングル―」(死別・離婚・未婚などにより一人で子供を
育てている母親)②カトリックで、女子修道院長。▽mother 岩波
マザー〔mother〕[1](造語) 1母。「-コンプレックス」2 データ・音楽などの
はいった媒体で、複写の元とする。「-テープ」
[2]カトリック教会の、女子修道院長。⇔ファーザー 新明解
明鏡 なし
三国、岩波は名詞としていますが、「マザーがテレビを見ている」とも言わないし、「マザーに叱られた」とも言わないでしょう。「私のマザー」とも「マザーの服」とも言わない。
つまり、日本語では「マザー」は基本的に普通名詞としては使われない。複合名詞の要素となるだけですから、「造語成分」でしょう。
ただし、カトリックのほうでは、「マザー」と言うようです。用例を検索すると、特に「マザーテレサ」を指すことばとして使われている例が多く見つかります。あと、小説だかゲームだかで、登場人物を指す、ほとんど固有名詞のように使われている(「マザーテレサ」の場合もそうですね)例が見つかります。
ということで、これは新明解が正しいのでしょう。三国も岩波もダメ。明鏡が項目を立てないのは名詞として認めていないということでしょう。「マザー-」を含む複合語は項目になっています。
さらについでに「ファーザー」も。
ファーザー〔father〕1父親。ファザー。(⇔マザー)2〔宗〕神父。 三国
ファーザー①父。父親。「シングル―」(死別・離婚などにより一人で子供を
育てている父親)②カトリックで、神父。▽father 岩波
ファーザー〔father=父〕〔カトリック教会で〕神父。⇔マザー 新明解
明鏡 なし
こちらも同じですね。「父」の意味で名詞として使われることがないなら、新明解のようにするか、(造語)として複合名詞の例をあげるか、です。