ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

青菜

三省堂国語辞典の「青菜」という項目を見ると、

 

  青菜(名) なっぱ。

 

語釈はこれだけです。(この後に、「青菜に塩」という句の説明があります。)

では、「なっぱ」を見るともう少し説明があるかと思うと、

 

  菜っ葉(名) 菜(の葉)。

 

で終わりです。(この後に「菜っ葉服」という句があります。)

何だかバカにされているような気がしてきますが、それでも「菜」を見てみます。

 

  菜(名) 葉をおかずにして食べる野菜。なっぱ。「-のおひたし・-漬け」

 

やっとまともな説明にたどりつきました。「葉をおかずにする」野菜、ですか。例えばどんなものなのか。いくつか例も欲しいですね。キャベツやレタスは入るのか。

しかし、どうして「青菜」から「菜」へ直接行かないんでしょうかねえ。なぜに「なっぱ」を経由させるのか。編者が遊んでいる?

たとえば「青菜  青い菜。なっぱ。」とすれば、「菜」にすぐ行けます。

 

他の辞書で「青菜」を見てみます。

 

  青い色の菜(岩波)

 

これはつまり「菜」を見ろということでしょう。「菜」を見ると、

 

  菜 葉・茎などを食用とする草本類の総称。あおな。なっぱ。特に、アブラナ。「-の花」「-たね」

 

ふむ。こちらはちゃんと書いてあります。それでも、アブラナ以外の菜も知りたい。

 

 青菜 青い色をした(新鮮な)野菜。菜っぱ。(明鏡・学研)

  ホウレンソウ・コマツナのような、こい緑色の野菜(例解新)

  葉を食べる、緑色をした野菜。コマツナ・キョウナ・ホウレンソウなど。(三省堂現代新)

  ホウレンソウ・コマツナなど,緑色の濃い葉菜類の総称。(大辞林

 

「青い」というのはもちろん植物の葉の青さで、つまり緑色です。語釈では「緑」というほうが誤解がなくていいように思います。

ホウレンソウとコマツナが代表的なようです。

 

  コマツナ・ホウレンソウ・白菜など、葉の部分を食べる野菜 (新明解)

 

ん? 「白」菜も「青」菜と言っていいんでしょうか。「葉の部分を食べる」ことが重要で、「青い」必要はないのか。(話は違いますが、「赤い白墨」という言い方を連想します)

 

こういうことばの意味の範囲というのは、誰の使い方が標準とされるんでしょうか。農家や八百屋さんでしょうか。それとも消費者?

その他の青菜の例がありました。

 

  青い色の菜の総称。スズナ・フユナ・カブラナ・アブラナなど。(広辞苑

 

広辞苑はずいぶん違う例をあげています。ホウレンソウとコマツナをあげないのは、あえてそうしているのか。もしかすると、より古典的な文献での使い方なのでしょうか。