ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

岩波八版:音楽用語

音楽用語というものは、小学校あるいはそれ以前からなじみのあることばも多いのですが、まじめに考えるとどういう意味なのかわからず、かなり複雑で難しい理論的なもののようです。 以前、三国と三省堂現代新で音楽用語を少し調べたことがあります。(三国「…

岩波八版:愛する・ああ

岩波の第八版の検討です。 他の辞書で問題にした語を見てみます。 ・愛する三国と三省堂現代新で問題にした「愛する」を。 愛す 五他→愛する 愛する サ変他(略) 岩波 「愛する」の活用は「サ変」です。同じ意味で五段活用の「愛す」は「愛する」を見よ、で…

岩波八版:会話・あいだ・蹴る・営業

以前岩波の旧版で触れた語をもう一度振り返ります。今回の改訂でも変わらなかったところと、変わったところと。 まずは変わっていないところから。 ・会話ずいぶん前にとりあげた語で「会話」を。(2013-07-06 「会話する」) 会話 向かいあって話しあうこと…

なおかつ・なおさら

前回の続きです。 岩波第八版の「小型でありながら単なる言い替えにとどまらない語釈を」に関して、しつこく。 なおかつ《連語》<副詞的に>1そのうえにまた。2それでも、やはり。 なおさら《副(に)・ノダ》そのうえ、ますます。それにも増して。 岩波 「単…

岩波第八版(2):ゆるい・うまる

岩波国語辞典第八版の話の続きです。 「第八版刊行に際して」という「まえがき」に当たるものに、「小型でありながら単なる言い替えにとどまらない語釈を」という「第三版に際して」の一節が引用されています。 以前指摘した「単なる言い替えに」とどまって…

岩波第八版と「英語」

岩波国語辞典が第八版になりました。(2019年11月) 私は、ずいぶん前に岩波に「英語」という項目がないことについて書きました。 岩波国語辞典に「英語」という項目がないことに気がつきました。(「2015-04-17 岩波国語辞典と英語」) 今回、改訂されたと…

少ない

前回は「多い」について、連体用法に制限のある形容詞であることを書きました。 では、対義語の「少ない」はどうでしょうか。 まだ会場に残っている人は少ない。 ?少ない人がまだ会場に残っている。 この例の場合、やはり述語用法では問題なく、連体用法で…

多い

「多い」という形容詞は、特徴的な用法(の制限)がある語なのですが、ほとんどの国語辞典にはそのことが書いてありません。 (日本語教師にとっては、知っておくべき常識の一つです。) 例えば、 まだ会場に残っている人は多い。 この図書館は本が多い。 とは…

肌色

前回の「黄色人種」で出てきた「肌色」を国語辞典で見てみます。 肌色 1肌の色。肌の色つや。2人の肌のような色。やや赤みがかった薄い黄色。 明鏡 1人間の肌の色(のような、少し赤みを帯びた、薄い黄色)。2その人種としての肌の色。 新明解 1人の肌の…

黄色人種

ちょっと微妙な話ですが。新明解から。 おうしょく[黄色]「きいろ」の漢語的表現。こうしょく。-じんしゅ[-人種]〔白色人種・黒色人種に対して〕皮膚が黄色の人種。頭髪は黒い。日本人はこれに属する。 新明解 「黄色人種」の説明として、「皮膚が黄色…

OG・OB

久しぶりに外来語の原語問題です。 オージー[OG]〔←old girl〕<卒業/退職>した、女性の先輩。(⇔OB) 三国 オージー[OG]→オービー(1) オービー[OB]1(在校生に対して)卒業生。先輩。▽old boyの略。女にはgirlを使って「OG」と言う。 岩波 オージー…

縦線・横線

前回に続いて、日常的に使われる語が国語辞典に載せられていないという話です。 「縦線」「横線」はどちらもよく使われることばだと思いますが、三省堂国語辞典にはどちらもありません。 新明解にはどちらもあります。 じゅうせん[縦線]縦の線(筋)。⇔横線 …

表面(おもてめん)

「おもてめん」ということばについて。 例解新国語辞典の「ひょうめん」の項で触れられていることばです。 ひょうめん[表面]1外から見える、もののいちばん外がわの面。[用例]液体の表面。[類] 外面。2もののおもてがわの面。俗に「おもて面」ともいう。…

三国の(感)と〔話〕の関係

三省堂国語辞典の「感動詞」(感)と、「話しことば」〔話〕の関係がよくわからないという話です。 三国が、ある語について「話しことば」という「文体」を注記するのは非常にいいことだと思うのですが、その注記の基準がよくわかりません。 特に感動詞の場…

相(も)変わらず

「相変わらず」と「相も変わらず」の二語をどう説明するか、という問題です。 三省堂国語辞典はあまりはっきりしません。 相変わらず(副)今までと変わらず。あいもかわらず。〔「あいかわりませず」は、ていねいな言い方〕 三国 相も変わらず(副)今まで…

おいそれと

また三省堂国語辞典の語釈が不十分、と思ったら、そんなに簡単な話ではなかった、という項目です。 おいそれと (副)〔下に打消しのことばが来る〕すぐに。簡単に。「-(は)できない」 三国 私の感覚では、「おいそれと」は「すぐに。簡単に。」という語釈で…

おいうち

三省堂国語辞典の語釈の不明確さ・不十分さの問題です。漢字表記の問題も絡みます。 おいうち [追い打ち・追い撃ち] 追いかけてうつこと。追撃。「-をかける」 三国 「追いかけてうつ」の「うつ」の意味がはっきりしません。「追い打ち・追い撃ち」という漢…

多く

短い話。 三省堂国語辞典のなんだかわからない用例の話です。 多く 1(名)たくさん(の)もの。「-を語らない」2(副)たいてい。ふつう。「-は」 三国 この2、副詞としての「おおく」の用例が「多くは」だけなのです。 これで用例と言えるでしょうか。…

アイス

三省堂現代新国語辞典から。 アイス 1氷(で冷やしたもの)。「-コーヒー」[対]ホット 2(略) これはおかしいですね。 「アイス」とはまず「氷」です。確かに。そして、「氷で冷やしたもの」です。その例が「アイスコーヒー」。ここまではいいですが、「対義…

あけましておめでとう

軽い話を。新年のあいさつ「あけましておめでとう」が辞書の項目になっています。まずは明鏡。 【明けましておめでとう】連語 新年が明けたことを祝う挨拶のことば。「━、今年もよろしく」▽口頭語だが、賀状などでも使う。 明鏡 三国はいろいろな情報を加え…