ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

2021-11-01から1ヶ月間の記事一覧

呼び:三国の「名詞形」

短い話です。 三省堂国語辞典は、動詞の(連用形の)「名詞形」を[名]で示します。例えば、 呼び寄せる (他下一)近くへ呼ぶ。呼んで、来させる。「電報で-」[名]呼び寄せ。 三国 のようにして名詞形を示します。 それはいいのですが、次の「呼び」の…

さりげない

前回の「何気ない」を受けて、類義のことばを。 前回の記事で、三省堂国語辞典の「何気ない」の項を引用しました。 なにげない 1特に何も意図しない。「何気なくふり向いた・-ひとこと」 2なんとも思っていないかのようだ。さりげない。「-顔つきでたず…

なにげない

形容詞「なにげない」の用法について。形容詞の連用形(「なにげなく」)は、副詞と同じように使われます。 まず明鏡国語辞典から。 1はっきりした考えや深い意図もなくふるまうさま。「━風を装う」「━一言が 胸に突きささる」「━・く窓外に目をやる」 [注…

しんみり

新明解国語辞典から。 しんみり -と-する 人の世のはかなさやつらさなどを今さらのように感じ、 もの悲しい気分にひたる様子。また、その場の雰囲気がもの悲しい感じに なる様子。「故人を思い出して-する/昔のことを-と語り合う/戦時中 の苦労話に座…

ふらりと・ぶらりと

三省堂国語辞典と新明解国語辞典から。 ふらりと 1力なくゆれ動くようす。「-よろける」2これといった目的もない ようす。「-立ち寄った」→ふらっと。 三国 ふらりと その時の気分やその場の成り行きにまかせて行動する様子。「その男 はどこからともなく…

どうにも

前回、「さも」に関してあちこち見ているうちにおかしな語釈に気付きました。三省堂国語辞典から。 どうにも 1どういうふうにしても。「-(こうにも)ことわれない」 2どんなにがまんしても。「-やりきれない」 ・どうにもしようがない[句]それ以外には、…

さも

ある中学生が「さも」ということばを国語辞典で引いてみたら、使い方がわかるかどうか。 三省堂国語辞典から。 さも 1〔文〕そのように。「-あろう」2いかにも。「-おもしろそうに笑う」 三国 それぞれ他の語で置き換えただけで、「1そのように」「2い…

今頃・今日

形容動詞の話はひとまず終わりにして、また副詞を。 三省堂国語辞典から。 今頃 「今1①」を中心とした、おおよその時間をさすことば。「-何をして いるだろう・去年の-」 三国 「今1①」とは。 今 ①過ぎ去ったときでもなく、これから先のときでもないとき…

「形容動詞」:新明解・岩波・明鏡の比較(3)

「形容動詞」の話の続きです。3冊の国語辞典の扱いを比較します。参考に三国も。岩波の新しい「語類」が出てきます。 新明解 岩波 明鏡 三国汗だく ノダ 名・形動 名・形動ダ汗みどろ 名・形動 名・形動ダ当たり前 ーなーに ダナノ 名・形動 形動ダアダルト …

「形容動詞」:新明解・岩波・明鏡の比較(2)

前回の続きです。前々回の比較表の続きをコピーし、感想を付け加えます。 新明解 岩波 明鏡 三国 開けっ放し ーなーの 名・形動 名・形動ダ 開けっ広げ ーなーに 名・形動 名・形動ダ あこぎ ーな ダナノ 名・形動 形動ダ 朝寝坊 名ノナ 朝飯前 名・形動 名・形…

「形容動詞」:新明解・岩波・明鏡の比較

前回の続きです。 いわゆる「形容動詞」を国語辞典がどう扱っているか。新明解・岩波・明鏡の三冊を比較します。(参考として、通説に従っていると思われる三国も並べます。) 前回の比較表から、最初の5語を。 新明解 岩波 明鏡 三国 アカデミック ーな ダ…

国語辞典と「形容動詞」:新明解・岩波・明鏡の比較

前回に続いて国語辞典と形容動詞の問題を扱います。 これまで、新明解・岩波・明鏡の各国語辞典がいわゆる「形容動詞」をどう扱っているかを何回かに分けて述べてきました。 かんたんに要点を繰り返すと、 新明解 「形容動詞」という品詞は立てない。名詞・…

明鏡国語辞典と「形容動詞」

少し前に、国語辞典が「形容動詞」をどう扱っているかを何回か書きました。 2021-09-18 新明解の副詞:くたくた・ぐたぐた(の前半) 2021-09-20 新明解と形容動詞 2021-09-25 新明解と形容動詞:「-な-に」/「-な」 2021-10-01 岩波国語辞典と形容動詞 …