ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

2019-12-01から1ヶ月間の記事一覧

国語辞典:私の見方

2019年も今日で終わりです。今年はこのブログにずいぶん書くことができました。 今回は、私が国語辞典をどうとらえているのかということを書いてみます。 国語辞典を考える際にいちばん重要な点は、国語辞典とはいったい何のためのものなのか、国語辞典の利…

現代仮名遣いと「おう」の発音

前回の「おう」と「おお」の話を書いていて、問題の一つは「現代仮名遣い」にあるのだな、と思いました。 「現代仮名遣い」とは、wikipediaによると、 現代仮名遣い(げんだいかなづかい)は、1986年7月1日に昭和61年内閣告示第1号として公布された日本語の…

おう:おお

三省堂国語辞典は「おう」と「おお」が別々に項目としてあるのですね。 おう [2] [応](感)〔古風〕承知することば。はい。「-と答えてやって来る」⇒:おう(感) (おう[応]の[1]と[3]は、名詞と造語成分の用法です。) おう(感)1〔男〕ぞんざいに答え…

ディープ

三省堂国語辞典のなんだかわからない用例の話です。 ディープ(形動ダ)〔deep〕深い。濃い。「新宿の-なゾーン」 三国 「新宿の 深い/濃い ゾーン」。これで何のことかわかる人はどのぐらいいるのでしょうか。 深い 1底までの距離が長い。2位置が底に近…

ヤングアダルト(2):こども

前回の続きです。三省堂現代新の「ヤングアダルト」の語釈の検討から始めて、「若者」「青年」との範囲の違いを考えました。今回は「子供」の範囲について考えます。 ヤングアダルト 大人と子供の間の年代の若者。[とくに本の読者対象に言う。略号YA] 三省堂…

ヤングアダルト(1):若者・おとな

三省堂現代新国語辞典に「ヤングアダルト」という項目がありました。「若者」「大人」との関係で、いろいろ考えてみたことを書いておきます。 ヤングアダルト 大人と子供の間の年代の若者。[とくに本の読者対象に言う。略号YA] 三省堂現代新 「大人と子供の…

傾向

抽象的な意味を持つ語をどう記述するかという問題です。 どの辞書も今ひとつ、という感じです。まずは新明解から。 1同じような条件(環境)にある物事が、全体にわたってそうなりそうな大勢にあると判断されること。「増加の-にある/頭打ちの-を示す/下…

東西南北・右左

「南」から考えます。三省堂現代新国語辞典によると、 南 日の出る方向に向かって、右の方角。 右 南を向いたとき、西に当たるほう。 西 太陽のしずむ方角。 三省堂現代新 なんだか、いいような、ダメなような。「南」の説明の「右」に、上の語釈を代入して…

上下・高低

前にも書いたことがある「上下」の話を、三省堂現代国語辞典でも見てみます。(「2017-11-18 上」) 上 高いところ。「山の-」 高い 下からの長さ(高さ)が大きい。 下 位置が低いこと(ところ)。「-のへや・-を向く」 低い 下からの長さ(高さ)が少ない。 …

目標

「目的」の次は「目標」を考えます。三省堂国語辞典から。 目標 1〔到達しようときめた〕めあて。「-に達する・貯蓄-額」 目当て 1ねらい。目標。「学習の-」 ねらい 1ねらうこと。(例略)2めざす目的や意図。「この会の-」 目的 〔何かをするとき…

目的

「目的」は日常よく使う言葉ですが、じっくり考えてみると、興味深い用法を持ったことばです。 目的 〔何かをするときの〕めあて。めざすところ。「-をはたす・-をもつ・研究の-」 めあて 1〔そうしたい〕とめざしていること。「学習の-」[類]目標 めざ…

あなた

日本語で、非常に使い方の難しい語の一つです。 三省堂現代新国語辞典から。 あなた 相手をさす、軽い尊敬語。[用法]もっとも標準的な言い方であるが、目上の人には使えない。⇒ 君・おまえ ⇒ ことばの世界「あなた」 三省堂現代新 この「あなた」の項と同じ…

重さ・重量

三省堂現代新国語辞典から。 重さ 1重いこと。重い程度。「責任の-」2重量。 重量 1ものの重さ。[類] 目方 ⇒[比較] 質量 2とても重いこと。「-級」[対]軽量 三省堂現代新 「重さ」とは「重量」で、「重量」とは「ものの重さ」のことである、と。見事に…

ハ調・ラ

三省堂現代新国語辞典第六版の検討を続けます。 前回、巻末の「ABC略語集」の話をしました。その「A」に、「音名。ハ調のラ。」という説明がありました。「E」にも「音名。ハ調のミ。」とありました。 では、「ハ調」「ラ/ミ」のきちんとした説明は、この…

エー・ビー・シー

前にこのブログで、「A・B・C・~」の使われ方の話を何度かしたことがあります。(2017年7月) 記号としては「英字」ですが、その読み「エー」「ビー」「シー」などは日本語なので、項目として立てるべきだという主張をしました。 そして、三国・新明解・明…

固有名詞:近代文学

『三省堂現代新国語辞典第六版』の固有名詞の項目をひいて、感想を書いています。 さて、日本の近代文学関係の固有名詞です。数が多いので項目を列挙することはしません。 明治の初めから戦後まで、文学史でおなじみの作家・作品名が項目としてとりあげられ…

固有名詞2:古典文学

前回の続きで、三省堂現代新国語辞典第六版の固有名詞を見ていきます。 「文学関係の人名・作品名を収めて」いるということで、どんな人・作品が入っているのか、あれこれ引いてみました。(我ながらひまじんです。) 古いところから見ていくと、まずは古事…

固有名詞

三省堂現代新国語辞典第六版の検討を続けています。 この辞典の特徴の一つは、固有名詞を項目としている小型辞典だということです。 「この辞典を使う人のために」には、 固有名詞は、日本と外国の、おもに文学関係の人名・作品名を収めています。 とありま…

愛する

三省堂現代新国語辞典第六版の検討です。「愛する」をとりあげます。 愛する(他動サ変)1相手の幸せを願って、あたたかい気持で接する。「子どもを-」2恋いしたう。「初めて人を心から-」3ものごとをたいせつに思う。「学問を-・自然を-」▽愛す。[類…

ああいう

『三省堂現代新国語辞典第六版』の検討です。「ああ」に続いて「ああいう」をとりあげます。 ああいう (連語)あのような。「-人になりたい」[類]ああいった・ああした [関連] こういう・そういう・-・どういう 三省堂現代新 語釈に使われた「あのような…

ああ

あるところで、『三省堂現代新国語辞典第六版』がなかなかいい、という記事を読んだので、いつもの三国・新明解・明鏡とは違った辞典を少しゆっくり見てみよう、と思いました。 「まえがき」には、 『三省堂現代新国語辞典 第六版』は、平明な記述と、いわゆ…

エイプリルフール

軽い話で。 エープリルフール〔April fool〕〔西洋の習慣で〕公然とうそをついていいとされる日〔=四月一日〕(にだまされた人)。四月ばか。エイプリ(ー)ルフール。 三国 〔西洋の習慣で〕公然とうそをつき、人をかついでいいとされる日〔=四月一日〕。 新明…

おいら

私は、「おいら」というのは単数だと思っていました。 (代)〔俗・男〕おれ。おれたち。 三国 (代)〔「おれら」の変化〕「おれ(たち)」の意の口頭語的表現。 新明解 《代》〔俗〕一人称の人代名詞 おれ。おれたち。「━がやったんじゃないや」「おれら」の転。…

追い越す・追い抜く

三国の記述がちょっと足りない例です。 追い越す 1追いついて、相手より先へ出て進む。2〔法〕車が追いついたあと、車線を変えて前に出る。→追い抜く2。3同僚や先輩よりも高い地位につく。 三国 追い抜く 1追いついて、相手より先へ出る。2〔法〕車が…

負い目

三省堂国語辞典のダメな語釈。 負い目 1〔気持ちの上での〕重荷。負担。「-を抱く」2〔文〕借り。負債。 三国 これはまったくダメですね。「重荷・負担」というだけでは、例えば、「新しい仕事がめんどうな仕事で重荷を感じる」という場合にも当てはまっ…

駅弁

軽い話です。 駅弁 駅で売る弁当。 三省堂国語辞典(三省堂現代も同じ) 駅弁 駅で売っている弁当。 例解新(新選も同じ) ずいぶんかんたんですが、これでいいでしょうか。 たとえば、毎朝、駅の売店で通勤客に売る弁当は「駅弁」か。コンビニで売っている…

短い話。 用 処理する必要のあること。 岩波 当面しなければならない(済ますことが求められている)事。 新明解 「(私は)今日は用があって忙しい」ならとりあえず上の説明でいいのですが、人に対して「ちょっとお前に用がある/お前になんか用はない」と…

食べ物・食物・食品

「食べ物」と「食物」は同じと言っていいか。「食べ物」が話しことばで「食物」が書きことば、というのはすぐ感じることですが、それ以外に何か違いがあるでしょうか。 食べ物 〔生きていくために〕食べるもの。しょくもつ。「明日の-にも困る」 食物 〔成…

愛人・情夫・情婦

変なタイトルですが、用法が変わった語と、辞書によって意味が違ってくる語です。まずは語釈があいまいで、結局はっきりしない岩波から。 愛人 1恋愛の相手。こいびと。▽第二次大戦後、新聞等で「情婦」「情夫」を避けてこの語を使い、「恋人でなく-だ」の…

エキシビション・エキジビション

語釈を読んでも、どうもよくわからない項目です。まずは三省堂国語辞典から。 エキシビション〔exhibition〕1展覧(会)。展示(会)。2←エキシビションゲーム。▽エキジビション。 ・-ゲーム〔exhibition game〕 公式には記録しない<公開試合/公開演技>。…