ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

短い話。

 

  用  処理する必要のあること。   岩波
     当面しなければならない(済ますことが求められている)事。  新明解

 

「(私は)今日は用があって忙しい」ならとりあえず上の説明でいいのですが、人に対して「ちょっとお前に用がある/お前になんか用はない」という場合はどうなんだろうと長い間思っていました。この「に」は何なのか。こういう場合の「用」は、どう説明したら(どう言い換えたら)いいのか。

「お前に 関して/対して? 用(処理する必要のあること)がある/はない。だから、ちょっと顔を貸せ/向こうへ行け」、というのは何となくぴったりしません。

 

先日、小学館日本語新を見ていたら、「用」 の例文に、

 

  お前に要はない〔=会ったり話したりする必要はない〕。

 

というのが突然出てきて、びっくりしました。一瞬、「用」の誤植だと思ったのですが、そうでないのかとも思います。

項目としての漢字表記は「用」だけで、この例だけが「要」の字になっています。

「要」という項目はまた別にあって、「説明の要がある」という例が載っています。

他の辞書には似たような記述はありません。

「~に用がある」という「に」の例としては、

  今日は銀行に用があるので、ちょっと遅れます。

のようなものが考えられますが、この「に」は「場所」あるいは「対象」のどちらと考えたらいいのか。「対象」でいいなら、「お前に用がある」の「に」も「対象」なのでしょう。

まずは、小学館日本語新の用例が誤植なのか、そうでないのか知りたいと思いますが、はがきを出せば答えてくれるでしょうか。