ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

2015-01-01から1年間の記事一覧

お昼

「お昼」という語について。 三省堂国語、新明解にはこの語はありません。「昼」はもちろんあり、「お」をつけた用例ものせていますが、「お昼」という形で項目とする必要は感じていないようです。 明鏡は「おひる」という項を立て、次のように書いています…

地名

国語辞典で地名をどう扱うかというのは、難しい問題で、かんたんに答えの出ることではないでしょう。 固有名詞は項目としない、というのは一つの態度ですが、それでうまくいくかどうか。 たとえば、「アメリカ」という地名・国名をどのように説明するか。 三…

右・左(2)

右と左の続きです。 他の三冊の辞書で、同じ項目を調べてみました。 現代例解 学研現代 例解新 右側みぎがわ × × × 右側うそく × × × 左側ひだりがわ × × × 左側さそく × × × 右腕みぎうで ○ ○ ○ 右腕うわん ○ ○ × 左腕ひだりうで × × × 左腕さわん ○ ○ ○ 「…

右左

北・南などを調べたので、今度は右・左に関する語をちょっと調べてみます。○は項目あり、×は項目なし、です。 明鏡 三国 新明解 岩波 右側みぎがわ ○ × × × 右側うそく × ○ × × 左側ひだりがわ ○ × × × 左側さそく × ○ × × 右腕みぎうで ○ ○ ○ ○ 右腕うわん …

岩波:南国

岩波国語辞典の話の続きです。 前回は「北東」などがないということを書きました。 今度は「南国」がないという話です。当然「北国きたぐに」も。 あってもいい言葉ですよねえ。「南洋」もなし。「南方」もなし。 岩波の辞典には「北方(領土)」ということ…

岩波:北東

岩波国語辞典についての話です。 「北東」が項目としてありません。「東北」も。 方角はいらないという判断です。そうかなあ。 驚いたのは、「南北」もないこと。「南北問題」も「東西南北」もこの辞書ではわからない。 「東西」はあります。この辺の判断の…

自動詞・他動詞(3)

自動詞と他動詞の話の続きです。 これまでの結果と、さらにいくつかの動詞を加えて表にしてみました。 新明解 明鏡 三国 岩波 持ち寄る 自 他 他 他 喜ぶ 自 他 自 他 怖がる 自 他 なし 自 焦る 自 自他 自 自 忍ぶ 自他 自他 自他 他 頼る 自他 (自)他 自…

自動詞・他動詞(2)

自動詞と他動詞の話の続きです。 他の辞書もちょっと見てみます。岩波と三省堂国語を。 よろこぶ 五他 岩波 よろこぶ 自五 「合格を-」 三国 こわがる 五自 岩波 (三国 「こわがる」項目なし) あせる 自五 「成功を-」 三国 あせる 五自 「功を-」 岩波…

自動詞・他動詞

辞書によって自動詞か他動詞かの認定が違うという話です。 まず例を。 よろこぶ 【喜ぶ・《悦ぶ・《慶ぶ】(自五) (なにニ-/なにヲ-) よい事に出あって非常に満足し、うれしい(ありがたい)と思う。 親孝行をして、父の-顔が見たい 人に喜ばれる親切 人の注…

ゆるい・うまる

このところ、新明解のことばかり書いていて、どうもこのブログの筆者は、新明解が嫌いなんじゃないかと思われてしまいそうですが、そうではありません。 なぜ新明解のことをそんなに何度も書くかというと、それだけ何度も引いて、使っているからです。それで…

見つける・世話

細かい話を2つ。また新明解です。 みつける【見付ける】(他下一) その人が求めているものを捜し出したり ほしい(必要とする)ものが どこにあるかを知ったりする。 仕事を-〔=捜す〕 新しい彗星(スイセイ)を-〔=発見する〕 [新明解国語辞典第七版] 「仕事…

改造・消火

小さい話を二つ。まずは「改造」から。 改造 【改造】-する (他サ) 古くなって来た建物や不都合な部分の目立ってきた組織などに手を入れて、新しいものにすること。 「内閣-(人事)」 [新明解国語辞典第七版] この語釈だと、改造銃や改造バイクなどが含ま…

ひとみ

新明解の奇妙な語釈の話。 ひとみ 目の中心にある小さな円形の部分。医学的には瞳孔(ドウコウ)を指す。 〔広義では、目全体を指す。例、「つぶらな-/二十四の-/-を凝らす=一つの物をじっと見つめる」〕青い-の目 [新明解国語辞典第七版] ざっと読むと、…

ICBM

ちょっとぶっそうなものについての話ですが。 話しのとっかかりは、また三国から。 ICBM 地上から発射する、射程が5500km以上のミサイル。大陸間弾道弾。 三省堂国語辞典 これで何ら問題ないように思うのですが、大辞泉を見てみると、 ICBM 大陸間弾道ミサ…

アイドリング

新明解がよいと思う項目を。 まず悪い例から。三国に登場してもらいます。 アイドリング 機械の、からまわり。エンジンの、からふかし。「-ストップ」 『三省堂国語辞典』 これは、何だか30年くらい前の語釈という感じです。 からまわり 前へ進まないで、車…

勝つ・負ける

また、新明解ですが、、、。 【勝つ】(自五) (だれ・なにニ-) 実力の違いを認めさせて、それ以上対抗することを断念させる。 「強い者が―とは限らない/議論では彼に勝てない/善は悪に― /勝てば官軍〔=戦いに勝った方が結果的には善い者とされる〕」 【負…

教わる・口語

変なタイトルですが、新明解の「教わる」を引いて不思議に思ったことを。 【教わる】(他五) 「教える」の受動形「教えられる」の口語形。 先輩(この本)から多くのことを教わった [新明解国語辞典第七版] と言うのを見て、つまり、「教えられる」は「口語」…

解説と説明

「解説」と「説明」はどう違うんだろうと思いました。 明鏡国語辞典 かい‐せつ【解説】名・他サ変 その物事の内容・本質などをわかりやすく説明すること。また、その説明。 「ニュースの要点を━する」「━者」 せつ‐めい【説明】名・他サ変 ある事柄の内容や…

新潮現代国語辞典の例文

ちょっとあいてしまいました。軽い話を。 新潮現代国語辞典(第二版)の例文がすごいという話を書いた続きです。 別の素晴らしい例文を。 愛する 平和を愛する諸国民の公正と信義に信頼して〔日本国憲法〕 こういう例文を辞書に選ぶ編集者はすてきです。 も…

新潮現代国語辞典第二版

少し前に、アルファベットの「A」「B」や、ひらがなの「あ」「い」なども国語辞典の項目として立てるべきなんじゃないか、ということを書きました。 その時は、大辞林や広辞苑では項目として立てられているのを知っていたのですが、小型辞典でそうしている…

あいうえお(順)

ほとんどの辞書に項目としてなく、あったほうがいいと思われる言葉の一つです。 例外的にこれを載せている辞書は、私の知る限りでは、デジタル大辞泉です。(もちろん、ほかにもあるかもしれません。) あいうえお順 → 五十音順 という空見出しがあります。 …

藍と青

三省堂国語辞典で「藍」を引くと、 藍 〘植〙草の名。葉からとった染料は、青よりこく、紺よりうすい。「-色」 とあって、「青は藍より~〔青〕の[句]」を見よ、とあります。で、「青」を見ると、追い込み項目として、 青 (略)・青は藍より出でて藍より青…

鉛分

新明解国語辞典第七版 えんぶん 鉛分 鉛の成分。 え?「鉛の成分」って、鉛じゃないんですか? 成分 その物を構成している個個の物質(元素)。(新明解) なんですから。 隣の項目を見てみると、 えんぶん 塩分 海水や食品などに含まれている塩類(の量)。 …

ちいさい「っ」

また続きです。日本語の仮名の一つ一つを国語辞典の項目として立てるかどうかという話。 三省堂国語辞典は、「っ」という項目を立てていて、それはいいのですが、内容がどうも変です。 っ つまる音(オン)。促音(ソクオン)。また、そのかな。カタカナでは「ッ…

昨日の続きです。 ひらがなをどうするか。例えば「あ」を国語辞典の項目とするか。 広辞苑、大辞林は項目としています。(大辞泉は大辞林とほぼ同じ) 広辞苑 あ ①母音の一つ。口を広く開き、舌を低く下げ、その先端を下歯の 歯茎に触れる程度の位置におき、…

パイアール二乗

表題の「パイアールにじょう/じじょう」は、中学を卒業した日本人のほとんどが知っている(聞いたことはあるが、何だか忘れた?)表現だと思うのですが、どうでしょうか。 そして、これは立派な日本語だとも。(念のため:円の面積の公式です) で、「パイ…

アーバン

三省堂国語辞典の残念な項目を。 (名)〔urban〕都市。都会。「-ライフ〔=都市生活〕」 これは手抜きと言わざるをえません。 まず、「アーバン」は名詞とは言えません。名詞とは、 1 格助詞が付いて主語や補語になる。 2 「-だ/です」が付いて述語に…

他の省庁

「もんかしょう」の続きです。 最後の所に、「国交相・国交省」について、三省堂国語辞典は手元にないので調べられない、と書きましたが、調べてみたら、予想通り、ちゃんとのっていました。 国交省 ←国土交通省。こくこうしょう。 国交相 〔文〕国土交通大…

もんかしょう

文部科学省を略して「文科省」といいますが、大臣のほうも「もんかしょう」になるはずだな、と思って辞書を引いてみました。 明鏡・新明解・現代国語例解は、 もんかしょう 文科省 「文部科学省」の略 ということで同じでした。「文科相」はありませんでした…

アーベント

各種の国語辞典の最初のページを見比べて、いろいろ面白いと感じることを発見しているのですが、今日は「アーベント」について。 「アーベント」の原語がドイツ語で、「夕方(・晩)」を指すことはどの辞書も一致するのですが、さて、日本語としては何を意味…