ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

岩波:北東

岩波国語辞典についての話です。

「北東」が項目としてありません。「東北」も。

方角はいらないという判断です。そうかなあ。

驚いたのは、「南北」もないこと。「南北問題」も「東西南北」もこの辞書ではわからない。

「東西」はあります。この辺の判断の根拠やいかに。

「東西東西」「東西屋」という複合語が追い込み項目としてあります。これらを書きたかったからでしょうか。

それより、「南北」や「北東」のほうが基本的で、重要な言葉だと思うのですが。

 

どうやら、岩波の編集方針として、「わかりきった言葉(複合語?)」はのせなくともよい、というのがあるようです。

「北風」もありません。「北」はさすがにありますが。「北東」はわかりきっているから要らない、というのなら、「北」はもっとわかりきった言葉だと思うのですが、こちらは複合語じゃないからか。

「南風(みなみかぜ)」はありませんが、なぜか「南風(なんぷう)」はあるんですね。面白い。「東風(とうふう)」もあります。「東風(ひがしかぜ)」はありません。やはり、単純な複合語と考えるのでしょうか。

さらに見ていくと、「東方(とうほう)」「西方(せいほう)」はなし。「西方(さいほう)」はあります。難しい読み方はのせる。

「東方(ひがしがた)」「西方(にしがた)」はあります。ふう。いったい、何なんだ。

岩波の項目選定の基準というのは、なかなか興味深いものがあります。