ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

岩波第八版(2):ゆるい・うまる

岩波国語辞典第八版の話の続きです。

「第八版刊行に際して」という「まえがき」に当たるものに、「小型でありながら単なる言い替えにとどまらない語釈を」という「第三版に際して」の一節が引用されています。

以前指摘した「単なる言い替えに」とどまっている語釈を調べてみました。(「2015-08-16   ゆるい・うまる」)

 

  ゆるい 緩い 1 ゆるんだ状態にある。ゆるやかだ。はげしくない。(以下略)
  ゆるむ 緩む ゆるくなる(略)
  ゆるやか 緩やか ゆるい(1)さま。

  うまる 1 →うずもれる(1)(略)
  うずもれる 1 うまっている「雪に-」(略)         岩波第八版

 

何も変わっていませんでした。

「ゆるい」とは、「ゆるくなった状態にある」「ゆるいさま」です。
「うまる」とは、「うまっている」です。

何度改訂しても、この語釈の堂々巡りは解消されないようです。

細かいことを言うと、第五版では、
 
  うまる 1→うずもれる。

  うずもれる 1うまっている。「雪に-」2価値が人に知られずにいる。「-・れた人材」  岩波第五版

 

でした。つまり、「うずもれる」の2つ目の用法「価値が人に知られずにいる」も「うまる」の用法にあると解釈されてしまう書き方でした。それに気づいて、「うずもれる(1)」と「改訂」したようです。

しかし、語釈の堂々巡りはなぜか直されませんでした。それは問題ではないと思われたのでしょうか。

「うまる」を引いたら「うずもれる」で、つまり「うまっている」だという説明(?)なのに。