前回に続いて、日常的に使われる語が国語辞典に載せられていないという話です。
「縦線」「横線」はどちらもよく使われることばだと思いますが、三省堂国語辞典にはどちらもありません。
新明解にはどちらもあります。
じゅうせん[縦線]縦の線(筋)。⇔横線
おうせん[横線]横の線(筋)。⇔縦線
国語辞典にあるのは「じゅうせん」「おうせん」です。
私は、「じゅうせん」も「おうせん」も、長い間知りませんでした。私自身のことばは、「たてせん」と「よこせん」でした。
新明解には「たてせん」も「よこせん」もありません。もちろん、三国にもありません。
「おもてめん」の時と同じように、他の国語辞典を調べてみました。
新明解 明鏡 現代例解 岩波 三現代 学研現 旺文社 新選 集英社
たてせん × × × × × × × × ×
じゅうせん O △ × × × △ O O O
よこせん × △ × × × △ △ × ×
おうせん O O O O × O O O O
(小切手) O O O △ O O O O O
「たてせん」はまったくなく、「じゅうせん」ですら少ないです。
「よこせん」は「おうせん」の項で触れている辞書がいくつか。
三国は全部 × なので省略しました。
いちばん下の「小切手」というのは「横線小切手」という専門用語の項目があるかどうかです。
それは、各辞書に載せる必要があると思われているらしい専門用語で、その影響で「横線おうせん」が「縦線じゅうせん」より丁寧に扱われることになっているようです。
岩波の△は、
おうせん[横線]横に引いた線。「-小切手」(→せんびきこぎって) 岩波
「横線小切手」ではなく、「線引き小切手」として項目をたてていることによります。
三国は「横線小切手」の項も立てていないので、これらの小型辞書の中では非常に個性的な項目の選定をしていると言えます。
三省堂現代は「横線」がなく「横線小切手」があります。
その他の△の理由は、以下の項目の記述によります。
おうせん[横線]横に引いた線。よこせん。⇔縦線 明鏡
おうせん[横線]横に引いた線。横線よこせん。⇔縦線じゅうせん 旺文社
じゅうせん[縦線]たてに引いた線。たての線。⇔横線おうせん 旺文社
おうせん[横線]横に引いた線。よこせん。[対]縦線じゅうせん。 学研現代
「よこせん」を項目にしている辞書はありません。「おうせん」のところで「よこせん」とも言うよ、と紹介されるだけです。
しかし、なぜか「たてせん」は「じゅうせん」の項がある辞書でも、紹介さえしてもらえません。そんなに使わない言い方なのでしょうか。
確かに旺文社のように「たての線」と言えばそれでいいわけですが。
初めのほうに書いたように、私自身のことばは、「たてせん」「よこせん」で、まったくそれを疑わずに長い間生きてきました。
ネットで検索すると、「たてせん」「よこせん」という言い方も使われているようです。
どうして国語辞典はこれらのことばを項目としないのでしょうか。