「デートする」
「デートする」という、誰でも知っていることばをどう説明するか。
自サ変 異性と日時や場所を決めて会うこと。「恋人と━(を)する」 [明鏡国語辞典 第二版]
(親しい)男女が日時を決めて会うこと。 (岩波国語辞典)
これでいいでしょうか。だめですよね。
大学で教員が「異性」の学生と研究室で論文指導をしたら、上の解説に当てはまらないか。というのは、多少無理ないいがかりでしょうか。(岩波のほうは「親しい」の意味合いが問題ですね。)
教員にとって、学生は「異性」ではないんでしょう。じゃ、なんだ?
あるいは、「男女」ですらない?? この辺が、ことばの使い方にまつわる、本当に難しいところなんでしょうね。上の語義解説を読む場合、これらのビミョーな意味合い、含みを感じ取らないといけない。
「異性」というのは、単に男から見た女、あるいはその逆、ではないのです。性の対象として、「異性」なんでしょう。
だから、次の解説もことばが足りないと言わざるを得ない。
いせい[1][0]【異性】
(一)同種の生物の間で、男女・雌雄の性の違う△こと(もの)。
(二)男性から女性を、女性から男性を指して言う言葉。
「―との交際」 『新明解国語辞典 第五版』
また、「親しい男女」という時の「親しい」と、教員が学生と「親しく」話をするという場合とでは、意味合いが違うということ。
いや、しかし、夫婦同士で仲のいい友達の場合、その一人ずつを取り出して「親しい男女」と言ってはいけないか。うーむ。やはりいけないんでしょうねえ。誤解が生じやすくなる。フリンになりそう。
それにしても、大事なことが抜けています。
―する 〔米 date〕〔愛し合う男女が〕日時を決めて、各自の
家以外の場所で会うこと。 『新明解国語辞典 第五版』
そうなんですよ。お互いの家で会っちゃあ、「デート」にならないんですね。こんな簡単なことを意外に忘れてしまう。新明解、いいですね。
ただ、「愛し合う男女」とはっきり言っていますが、これはいいか。
勇み足ですね。「新明解」は、ほかの辞書より一歩踏み込んでいることが多く、そこが私は好きなのですが、それだけに勇み足も多い。
例えば、幸いにある夫婦が愛し合っていたとして、共働きでそれぞれの職場からあるレストランへ行って、二人で食事をしたら、それは「デート」か。
「日時を決めて」とか、「各自の家」とか、いろいろこの仮想の設定とは合わないから、いいんだ、とするか。
単身赴任で別居中の夫婦ならどうか、と、いろいろケチをつければきりがありません。
では、「愛し合う」ではなく「恋人同士の男女」にすればいいか。
私の考えはここで止まってしまいました。
そのあとでさらに考えたのは、同棲中の恋人はどうなるか、でした。
やはり別に住んでいないと、「デート」にならないでしょうね。それは「各自の家以外」で確保できるか。
いやはや、簡単なことばも、なかなか難しいものです。よく話題になる「右」と「左」をどう定義するか、よりもこういう語も考えてみたらいいんじゃないでしょうか。
saburoo