前回の続きです。前回は、新明解・明鏡・岩波・三国の4冊の国語辞典について、「小人・中人・大人」の説明に問題があるのではないか、ということを書きました。
それらに対して、小学館日本語新の説明がいいのではないか、ということも。
まずは上の5冊以外の辞書の記述について。
現代例解・新選・旺文社は、みな新明解・明鏡などと同じような書き方で、不明確です。
集英社は「ちゅうにん」がありません。「小人・大人」だけです。ちょっと意外でした。
小人 <文章>(制度上・慣習上、成人扱いを受けない)子供。⇔大人だいにん。「-は半額」 集英社
学研現代は3つの語の対立の場合しかとりあげていません。つまり、「小人」が小学生を指しうる場合の説明がありません。
小人〔文〕〔中人[ちゅうにん]・大人[だいにん]に対して〕乳児から小学校に入る前ぐらいまでの子供。〔風呂屋・鉄道などの料金の区分に多く使う〕 学研現代
三省堂現代は、なぜか「公衆浴場」の年齢についてくり返し書いています。
小人 [入浴料・入場料などで]小さい子ども。[公衆浴場では、六歳未満]
大人 [入浴料・入場料などで]おとな(とみなされる人)。[公衆浴場では、十二歳以上]
中人 [入浴料・入場料などで]大人[だいにん]と小人[しょうにん]の間の人。[公衆浴場では、六歳以上、十二歳未満] 三省堂現代
これはおそらく、公衆浴場に関する法律があるのではっきり決まっている、ということによるのでしょう。
それでも、三省堂現代も、「小人」が小学生を指しうる場合があるのかどうかがはっきりしないのはよくありません。
以上は前回の補足です。
さて、前回触れなかったもう一つの問題があります。
それは、「小人しょうにん」が「小学生(以下)」であるとすると、「大人・小人」の二つに大きく分けられた場合、中学生などが「おとな」とみなされることになります。そのことは「だいにん」のところで述べておかなくていいのだろうか、という問題です。
もう一度、「だいにん」の項目を。
入場料金表などにおける、「おとな」の漢字による表記。たいじん。 新明解
おとな。たいじん。入場料などの料金区分に使う。 明鏡
おとな。⇔小人(しょうにん) 岩波
〔文〕〔入浴料・入場料などで〕おとな。たいじん。(⇔小人(ショウニン)) 三国
「おとな」というと、ふつうは二十歳以上を指すでしょうから、上の記述では誤解を招く場合があると言わざるをえません。
集英社は、
大人 <文章>(制度上・慣習上、成人扱いを受ける)おとな。成人。たいじん。⇔小人しょうにん。 集英社
という書き方をしています。「成人扱いを受ける」で、必ずしも二十歳以上ではないことが示されています。ここは、上の4つの辞書よりも注意深い書き方だと言えるでしょう。
それにしても、集英社は「中人」がないのですから、まずそこが大きな問題です。
さて、「小人」に関して丁寧に説明していた小学館日本語新はどうかというと、
大人 <文> おとな。入場料などの表示に用いる語。⇔小人(しょうにん)・中人(ちゅうにん) [例] 入浴料大人四〇〇円。 小学館日本語新
でした。
このように「おとな」と書いてしまうと、「大人:小人」の二分割の場合に中学生が含まれうることは想定しにくいので、やはりよくないんじゃないでしょうか。