ことば・辞書・日本語文法(2)

元日本語教師です。ことばと、(日本語)辞書と、日本語の文法について、勝手なことを書いていきます。

ウインター

だんだん三省堂国語辞典の外来語特集になってきました。今回は「ウインター」です。

 

  ウインター(名) 冬。「-スポーツ」

 

「ウインター」は確かに「冬」で、それ以外のものではありません。前回の「ウイッグ」を「かつら」とした時のような、意味の広がりの違いということもなさそうです。しかし、やはり問題があります。

それは、(名)という品詞の指定のところです。

名詞である、ということは、

  ウインターは/が ~

とか、

  ウインターを/に/の ~

あるいは、

  ~のウインター

などの使い方がある、ということです。

例えば、「ウインターがやってきた」とか、「今年のウインターはどこへ行こうか」とか、「寒いウインターをどう過ごすか」などの言い方をふつうはしないとするなら、「ウインター」は確かに「冬」を意味するけれど、日本語の中でふつうに名詞としては使われない、ということです。

では、どう使われるのか。他の多くの辞書は、「ウインター」を項目として立てていません。立てるべき項目として気付いていないのではないでしょう。逆に「ウインタースポーツ」を項目とする辞書があります。三国は、「ウインター」の用例としてあげているだけですが、他の辞書の編者は、説明が必要な語だと考えているのでしょう。

 

  新明解

   ウインタースポーツ 冬季に行われるスポーツ。スキー・スケートなど。

  明鏡

   ウインター-スポーツ 冬季に行われる運動競技。スキー・スケート・アイスホッケー・そり競技・カーリングなど。

 

「ウインター」が、他の語と結びついて使われるのが基本的用法なら、それは「造語成分」で、(造語)とすべきものです。もし、名詞として使われるというなら、「ウインタースポーツ」のような例ではなく、助詞を付けた例をあげるべきでしょう。

なお、次の三省堂現代の項目の立て方・用例は、どうも間が抜けている、と言っては失礼でしょうか。

 

  三省堂現代

   ウインター 冬。「-スポーツ」

   ウインタースポーツ 冬のスポーツ。スキー・スケートなど。

 

せめて前者の用例を複数にするか、他のものにしたほうがいいのではないでしょうか。