前回の「おう」と「おお」の話を書いていて、問題の一つは「現代仮名遣い」にあるのだな、と思いました。
「現代仮名遣い」とは、wikipediaによると、
現代仮名遣い(げんだいかなづかい)は、1986年7月1日に昭和61年内閣告示第1号として公布された日本語の仮名遣いである。
国語辞典(例えば明鏡)の付録にも載せられています。
それによると、「オ列の長音」は、「オ列の仮名に「う」を添える。」とあり、
おとうさん とうだい(灯台)
などの例が並んでいます。
また、ずっと後のほうに、「次のような語は、オ列の仮名に「お」を添えて書く。」とあって、
おおかみ おおやけ(公) こおり(氷) とお(十)
などの例があげられています。
これらはよく知られていることだと思います。
私は今回始めて知ったのですが、「前書き」に、
この仮名遣いは、擬声・擬態的描写や嘆声、特殊な方言音、外来語・外来音などの書き表し方を対象とするものではない。
という一文がありました。この中の「嘆声」とは、
嘆声 1なげいて発する声。嘆息。2感心して発する声。感嘆の声。 明鏡
ですから、感嘆詞もこの類です。
「オー」という発音を「おう」と書くのが基本ですが、「おお」と書いてもいいということですね。
しかし、ここで困るのは、「オウ ou」と発音する場合、どう書けば、「オウ」と読んでもらえるのか、ということです。
かたかなで「オウ」あるいは「オゥ」などと書くのが一つの方法ですが、そうしたくない場合、ひらがなで書きたい場合、どうするか。
「いくぜ!」「おう!」
と書いて、「ou」と読んでもらいたいのだけれども、読み手は「現代仮名遣い」に従って「オー」と読んでしまうかもしれない。
私は、現代仮名遣いは歴史的仮名遣いよりずっといいと思っていますが、どうも不徹底なところがあるとも思います。
「オー」はすべて「おお」または「おー」と書けばよかったんじゃないかと。
「とおきょお」「とーきょー」は、今見ると変ですが、子どものころから慣れてしまえば、と言うよりそれしか書き方をしらないのであれば、ごくふつうの書き方に感じられるでしょう。(三国・新明解の元となった「明解国語辞典」は、見出しがこの「発音引き」だったそうです。私は、残念ながら所持していません。)
そうであれば、「オー」と「オウ」の発音を書き分けるのは何でもないことだったんだと思います。
三冊の辞書が、一つには「おう」と「おお」があり、他の一つには「おう」のみ、さらにもう一つには「おお」のみがある、というような、辞書による違いがあり、利用者は使う辞書によって違う表記を目にすることになる。
そういうことが起こる原因の一つは、それぞれの編集者の考え方の違い以外に、「現代仮名遣い」の不徹底さにある、というのが私の今回の結論です。